知りたい!介護口腔ケアの重要性と高齢者へのケアポイントを解説!
Dキャリアプラス編集部です。
介護が必要な方の口腔ケアはお口の中を清潔に保つだけでなく、身体の健康維持の役割も担っています。
ですが「口腔ケアが苦手」「うまくできているのか不安」「正しいやり方が分からない」という方も多いのではないでしょうか?
今回の記事では、介護や高齢者への口腔ケアについて、またその重要性やケアのポイントをまとめて解説します!
併せて、Dキャリアプラスの動画学習コンテンツやセミナーなどもご紹介しています。
目次
口腔ケアとは?
「口腔ケア」は「お口のお手入れ」のことですが、お口からのサインを見つけることが「口腔ケア」のはじめの一歩です。
お口の中の異常が、身体に現れることがあります。
食事形態を変えたのに食がすすまない、口臭がひどくなったなど、おかしいなと感じたら「口腔ケア」が必要なサインです。
毎日できる簡単な「口腔ケア」に取り組んだだけでも、高齢者がだんだんと元気を取り戻していく例もあります。
【一般的な口腔ケア】
検診、口腔清掃、義歯の着脱とお手入れ、咀しゃく・嚥下(えんげ)のリハビリ、歯肉・頬部のマッサージ、食事の介護、口臭の除去、口腔乾燥予防、などがあります。※
口腔ケアの目的
口腔ケアは、口腔内を清潔にするだけでなく疾患予防や機能維持などを行い、健康維持・促進の役割も担っています。
最大の目的は口腔機能を維持向上させ、生活の質(QOL)を高めることにあり、高齢者がいきいきと生きていくために欠かせない重要な要素です。
口腔ケアの方法
口腔ケアの種類には大きく2つに分類されます。これらを組み合わせて行うことで、口腔機能を維持向上させます。
【器質的口腔ケア】
器質的口腔ケアとは「お口の中をお掃除して清潔に保つ」ためのケアです。食後のうがいや歯みがき、口腔内の歯垢や食べかすをきれいに除去します。歯の汚れだけでなく、歯ぐき・舌・頬の内側・上顎などに付着した汚れも取り除き、細菌の繁殖を抑えます。誤嚥性肺炎の原因の多くは「口腔内常在菌」といわれています。
【機能的口腔ケア】
機能的口腔ケアとは「お口の機能を回復させ、維持・向上する」ためのケアです。口腔機能とは主に、噛む・飲み込む・話す・笑うなど、お口の働きのこと。お口のリハビリをすることで、筋肉や脳が刺激され失われていた口腔機能が回復することもあります。
介護において重要な口腔ケア
高齢者にとっての口腔ケアは「お口の中のお手入れ」としてだけでなく、口腔内環境の改善、糖尿病や認知症など全身的な疾患の予防にもつながる重要なケアです。
介護が必要な人はどのくらいいるの? 85歳以上の人は約60%も!
40歳から90歳以上の年代別人口に占める「要介護者」の割合を統計から見てみると、40〜64歳では2.3%、65〜69歳では2.9%、加齢とともに割合は増え、85歳以上では57.5%に達します。
● 厚生労働省「介護給付費等実態統計月報 2022年2月より」
介護現場の口腔ケア
介護施設の口腔ケアでは職員が行うところや歯科衛生士が勤務していて口腔ケアを行うところ、協力歯科医療機関による訪問歯科を利用するところなど、さまざまなケースがあります。
介護保険制度においても2018(平成30)年に「口腔衛生管理加算」が新設。さらに2021(令和3)年には通所施設の口腔ケアに関する加算を中心に、介護予防を重視した内容へ拡充されています。
【訪問歯科診療】
訪問歯科診療とは、ご自身で歯科医院に通院することが困難な方のご自宅・病院・施設へ歯科医師・歯科衛生士が直接伺い、歯科診療をすることです。
● Dキャリアプラスの動画学習サービス「介護施設」「訪問歯科診療」などで学習ができます。
高齢者・要介護者の口腔内の特徴
補綴(ほてつ)物治療・入れ歯が多い
入れ歯を使用している方や、さまざまな治療による補綴物(詰め物・かぶせ物)が多く見られます。また今後は、インプラントの歯が残っている人も増えると考えられます。
自浄作用(じじょうさよう)が低下
お口には「自浄作用(じじょうさよう)」という働きが備わっています。歯の表面や歯と歯のすき間、舌などのお口の粘膜に付着した汚れや細菌をだ液により洗い流し、お口の中を清潔に保つ力です。高齢者の場合は口腔内乾燥などにより自浄作用が低下している方が多く見られます。
むし歯や粘膜疾患が増える
高齢者は特定の部位にむし歯ができやすい傾向があります。例えば、次のようなむし歯が考えられます。
● 歯ぐきが下がることによる、歯の根の部分のむし歯
● 詰め物、かぶせ物の中にできる隠れたむし歯
自浄作用の低下により、お口の中の汚れや細菌などが口腔内で増殖し、むし歯や歯周病の原因をつくり出します。また、加齢に伴い免疫力が落ちることで歯周病や粘膜疾患を進行させます。
粘膜疾患とは、口腔内の頬やあご、舌に発症する疾患のことで、代表的なものとしては「口内炎」や「義歯性腫瘍」などがあります。
お口の中に食べ物が残る
高齢者の中には、食事形態を変えて「きざみ食」にする、「とろみ」をつけて召し上がる方もいます。
きざみ食は、歯のすき間や口腔内に食べかすが残りやすく、ペースト食は粘り気が強いため、口腔内に長く停滞しやすくなります。
だ液の分泌が十分ではない高齢者の場合は、食べかすを洗い流す自浄作用が働かなくなったり、食べ物を飲み込むことが難しくなったりします。そのため口腔内環境が悪化し、むし歯や歯周病が進行する要因となります。
口腔内の乾燥
前出でも解説したように、加齢に伴ってだ液の分泌量は減少します。また内服薬の副作用などにより、さらにだ液が少なくなることもあります。口腔内が乾燥すると「噛む」「飲み込む」「発声する」ことをスムーズにできなくなり「入れ歯が痛くて入れられない」などの症状も現われることがあります。
介護口腔ケアのメリット
口腔内のさまざまなトラブルを放置しておくと、むし歯や歯周病の悪化だけでなく、さらなる口腔機能の低下や全身疾患、認知症などにつながる恐れがあります。
ここでは特に “4つの予防” について解説します。
① 誤嚥性肺炎の予防
誤嚥性肺炎には2つの種類があります。高齢者においては特に睡眠時など、知らない間にだ液を誤嚥してしまっているケースも多く、亡くなる原因の高位にあります。
【2つの誤嚥性肺炎】
1.食道へいくべき食べ物が誤って気管に入ってしまう
2.唾液を飲み込む際などに、唾液中の細菌が誤って肺に入ってしまう
これを防ぐためには、嚥下機能を維持向上させる必要があります。
嚥下機能の維持向上には「嚥下体操」が有効です。嚥下体操には「パタカラ体操」や「肩や首も含めた口の体操」などがあります。
● Dキャリアプラスの動画学習サービス「口腔リハビリテーション」「嚥下障害と低栄養」などで学習ができます。
● Dキャリアプラスでは歯科衛生士の方を対象とした「DSアカデミー/摂食嚥下」認定制度の講座も行なっています。
② 認知症予防
歯がほとんどないのに、入れ歯を使用していない・あまり噛めない・かかりつけの歯科医院がない人では、その後、認知症が発症するリスクが高いというデータがあります。
また、咀しゃく運動は脳を刺激するほか、酸素と栄養を送ることから認知機能低下を予防する効果があるといわれています。このようなことからも健康な歯を失っても、人工の歯で噛める状態にして維持していくことが、認知症の予防に有効です。
● Dキャリアプラスの動画学習サービス「高齢者と要介護者」などで学習ができます。
③ 口腔乾燥症予防
だ液の分泌が低下して、口が乾いた状態のことを指します。軽度では主に口の中のネバネバ感、ヒリヒリする・むし歯・歯垢の増加・口臭も強くなります。重度になると、唾液分泌量が低下して口腔内の乾きが進行する、強い口臭・舌表面のひび割れ・痛みで摂食障害・会話しづらい、などの障害も現れます。
口腔内にあるだ液腺に刺激を与えるマッサージなど、お一人おひとりに合った対応が求められます。気になる症状がある場合は、歯科医師・歯科衛生士へご相談することをおすすめします。
● Dキャリアプラスの動画学習サービス「粘膜ケア」などで学習ができます。
④ QOLの向上
口腔ケアを行う最大の目的は、 QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)を高め、 口腔から全身の健康維持をすることです。
「好きなものを食べる」「好きなことを話す」「元気に笑う」などは、「その人らしさ」を引き出す大切な要素。口腔ケアは健康面だけでなく心理面への影響も大きいため、高齢者のQOLを向上させる大きなカギとなります。
● Dキャリアプラスの動画学習サービス「高齢者と要介護者」「嚥下障害と低栄養素」「摂食嚥下」「口腔リハビリテーション」などで学習ができます。
介護口腔ケアのポイント
効果的な口腔ケアを行うためには知識と準備が必要です。気を付けなければいけないことや、口腔ケアをスムーズに行うためのポイントをご紹介します。
口腔ケア前の環境作り
口腔ケアを行う前には「今から口腔ケアをします」という説明が必要です。高齢者は他人に口の中を見られたり、みがいてもらったりするのを不快に感じることがあります。中でも認知症の方は「何をされるかわからない」という怖さから抵抗することがあります。
まずはリラックスしていただくために、 ゆっくりとした動作と言葉で、普段より大きな声で話すように心掛けましょう。世間話をしてコミュニケーションを取り「口の中をきれいにしましょう」など、簡単に説明します。
そして、姿勢を整え、リラックスできる環境を保ち、保湿剤などで唇の乾燥を防ぐマッサージをしてからケアを行うと抵抗が少なくなります。
ケア前のチェックポイント
次のような状態把握や観察をしておくと「口腔ケア」の多職種連携(※)も図りやすくなります。
全身の状態把握
ケアをする方の全身の状態を把握します。体調や気分はどうかなど 、その日の精神状態も確認しましょう。毎日変化する身体の状態を把握することは、その日に最適な口腔ケアができるかどうかにつながります。
ケアをする方がお持ちの疾患や認知症の有無、また既往歴の確認、特に感染症をお持ちの場合は対策が必要です。
食事時の観察
食事の様子を観察することは、口腔機能の状態を把握するための大切な要素です。
食事中に舌や頬の内側を誤って噛んでしまう、むせてしまうことはないでしょうか。「食べる」という行為を観察することにより、お口の機能がきちんと働いているかどうかを判断することができます。
【※多職種連携】
医師・歯科医師・薬剤師・看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・歯科衛生士・管理栄養士・看護助手・介護者(家族)・ケアマネージャー・施設職員などが、さまざまな現場で連携し協働すること。
● Dキャリアプラスの動画学習サービス「口腔ケアを始める前に」などで学習ができます。
ケアポイント
できることは本人に任せる
サポートできる環境をつくり、できる限り自力で歯みがきを行うように促しましょう。
ご本人ができない動きや痛みがある場合には、動作の支援や歯ブラシの形状を変えるなどの支援をすることが大切です。みがき残しの確認は忘れないようにします。
短時間で済ませる
口腔ケアが苦手な方には素早くケアを行い、清潔になったと認識してもらいましょう。次のケアにつながります。
高齢者の口腔内は乾燥しやすく、違和感を感じやすくなっています。毎日のケアは手際よく行い、良い印象を持っていただくことが重要です。
開始前に必要な用具を揃えておくなど、事前準備をしておくとスムーズに行えます。
安全な姿勢で行う
ケアをする方の状態によって、口腔ケアを行う場所と姿勢を決めます。
口腔ケアをすると、お口が刺激されて、だ液が出てきます。あごが上がった状態などでは、誤って唾液が肺に入ってしまうために発症する「誤嚥性肺炎」を引き起こしかねません。
あごをしっかり引いて、うつむき加減の姿勢をとることが大切です。誤嚥性肺炎を予防するためにも、姿勢を整える必要があります。
無理に行わない
口腔ケアを行う前には、必ず口腔内の確認をします。
痛い所がある、口内炎やかみ傷、腫れているなどの口腔トラブルが見られた場合には、無理に行わないようにします。トラブルの対処が必要になるため、歯科医院での治療を優先させましょう。
ケアによって傷つけないようにする
高齢者の口の中は乾燥していることが多く、粘膜が傷つきやすい状態です。ケアによって傷つけないように、保湿ジェルや水で保湿をして保護するようにします。
プライドを傷つけないようにする
ご自身で口腔ケアができる方には、ご自身で行なってもらいます。介護する方のプライドを尊重しながらサポートするようにしましょう。
歯科に相談する
口腔ケアを行うことに不安がある場合には、歯科医院や歯科医師に相談しましょう。口腔内トラブルの治療はもちろん、専門家ならではのケアやアドバイスを受けることができます。
歯科医師や歯科衛生士が、直接、施設や自宅を訪問してくれる「訪問歯科診療サービス」もあります。このようなサービスを活用する施設も増えています。
● Dキャリアプラスの動画学習サービス「口腔ケアを始める前に」「歯のケア」「口腔ケア」「訪問歯科診療」などで学習ができます。
まとめ
介護口腔ケアの重要性やケアポイントについて解説してきましたが、いかがでしたか?
Dキャリアプラスでは、施設や歯科医院などで行う「院内研修」も承っています。
介護に携わる方であれば、職種を問わず一般の方でも、それぞれに合った研修内容をご提案します。
介護者に対して行う「口腔ケア」について段階的に学ぶことができます。
● 要介護者の心身の特徴
● 口腔ケア手技の基本から応用
● 終末期や看取り期
● 認知症等などの口腔ケア困難者に対してのケアについて
など、多くの事例を盛り込んだ実践的なカリキュラムを作成します。
【ご興味がある方はお問い合わせください】