口腔機能発達不全症を理解して、歯科医院でできるMFTの実践を学ぼう
Dキャリアプラス運営事務局です。
お子さんの「歯ならび」「口をぽかーんと開けている」「しゃべる時にうまく発音できない」「食事の時にうまく噛めない」「飲み込めない」などのご相談を受けることはありませんか?
これらに当てはまることがあれば「口腔機能発達不全症」の可能性があります。お子さんの口腔機能の低下は歯ならびだけでなく、将来のむし歯や歯周病のリスクが高まってしまうため注意が必要です
この「口腔機能発達不全症」に影響を与える習慣や癖を改善して、口周りの筋肉が正常に働くように促すトレーニングには「MFT(口腔筋機能療法)」と呼ばれるものがあります。
今回は「口腔機能発達不全症」や「MFT」について、紹介いたします。
口腔機能発達不全症とは
日本歯科医師会の「口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方」によると、口腔機能発達不完全症は「食べる機能」、「話す機能」、「その他の機能」が十分に発達していないか、正常に機能獲得ができておらず、明らかな摂食機能障害の原因疾患がなく、口腔機能の定型発達において個人因子あるい は環境因子に専門的関与が必要な状態とされています。
病状としては「咀嚼や嚥下がうまくできない」、「構音の異常」、「口呼吸などが認められる」、また、患者には自覚症状があまりない場合も多いことが特徴です。
唇を閉じることが苦手な子どもや、口で呼吸している子どもは増加傾向にあり、これからも増えていく可能性が予測されています。
2018年、日本歯科医学会によって「口腔機能発達不全症」という疾患名が設定されました。
現在では全国の歯科診療所で、子どもの「口腔機能」を支援する治療や訓練への取り組みが積極的に行われています。
[参考]日本歯科医学会 口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方(令和2年3月)
MFT(口腔筋機能療法)とは
MFTとは『Myo(筋)functional(機能)Therapy(法)』の頭文字をとって略され、日本では「口腔筋機能療法」と訳されます。歯並びに関係している舌・唇・頬などの口腔周囲筋を正常な環境に整えることが目的で、後天的な筋肉の不調和をトレーニングを通して整えていく療法となります。
例えば、歯の矯正治療を行なっても筋肉からの圧力がそのままの状態だと、歯が元の位置に戻ってしまいます。併せてMFTを取り入れることで正しい舌の位置や飲み込みが身に付きます。歯が元の位置に戻ることを防ぎ、矯正治療をより効果的に行うことが可能です。
MFTを行うメリット
子どもはとくに「歯ならびや噛み合わせの改善」「矯正治療の後戻りが少なくなる」「発音が改善する」などのメリットが挙げられます。
大人はMFTのみでは歯ならびの改善が難しいこともありますが、他にもさまざまなメリットがあります。
- 歯周病の改善
- むし歯の予防
- 口腔内の自浄作用の増進
- ドライマウスの軽減
- 高齢者の咀嚼嚥下機能低下の防止
MFTのトレーニング方法
口腔周囲筋の機能を改善するため、主に3つのトレーニングによって口周りの筋肉にアプローチします。
- 個々の筋肉の訓練で舌や唇、咀嚼筋などの機能改善を図るトレーニング
- 適切な咀嚼・嚥下・発音・呼吸ができるようにするトレーニング
- 唇と舌がいつも適切な位置にあることを目指すトレーニング
【代表的なトレーニング】
- あいうべ体操
- スポットポジション
- ティップ
- ホッピング
- サッキング
など
「スポットポジション」「ティップ」「パタカラ体操」などについては、「MFT(口腔筋機能療法)とは?トレーニング方法などを学んで歯科衛生士のスキルアップにも!」で解説しています。
▼「あいうべ体操」「ホッピング」については“「食べたい」を支える訪問歯科診療の日”の動画(YouTube)で紹介しています。
【30日 あいうべ】12月18日は「食べたい」を支える訪問歯科診療の日
【25日 ポッピング】12月18日は「食べたい」を支える訪問歯科診療の日
▼またDキャリアプラスの動画学習サービス「口腔リハビリテーション」で口腔周囲筋のストレッチを紹介しています。
【動画学習サービス】口腔リハビリテーション
まとめ
正しい舌の位置や動かし方、嚥下の仕方など、正しい機能を身に付けていただくように指導する方法は多岐にわたります。
お一人おひとり、できていることやできていないこと、口腔の状態、口腔習癖が異なるため、それぞれの患者さんに合わせた指導を見つけることは難しいと感じる場合もあります。
Dキャリアプラスでは「口腔機能発達不全症」や「MFT」をテーマにしたセミナーも行なっていますので、セミナー情報をぜひチェックしてみてください。