コラム

口腔体操で誤嚥予防!正しいパタカラ体操の取り入れ方、効果的な嚥下トレーニングを紹介

口腔体操で誤嚥予防!正しいパタカラ体操の取り入れ方、効果的な嚥下トレーニングを紹介
Dキャリアプラス編集部です。

高齢者を対象とした訪問歯科診療の現場では、誤嚥を予防する目的として、パタカラ体操をはじめとする口腔体操を指導する機会があります。
誤嚥が懸念される高齢者のお食事ですが、口腔体操に取り組んでいただくことで、摂食・嚥下機能や構音機能の低下を予防し、食べ物を咀嚼し食道へ送り込む一連の動作がスムーズになり、誤嚥性肺炎の予防につながります。
本記事では、口腔体操の重要性とパタカラ体操などを含めた嚥下体操、嚥下のトレーニングの手順などをご紹介します。

 

食べる時に使うのはお口の筋肉だけ?

食べ物を飲み込む際に、頬や舌、喉などのお口の筋肉を使うことはイメージしやすいですが、実は全身の筋肉も大きく関係しています。
食べる動作を振り返ってみてください。まずは目で食べ物を認識します。次に手を伸ばして食器をつかみ、箸やスプーンを使い、食べ物を取り、口まで運びます。この時、手だけではなく、頭を支える首や肩の筋肉、腕や肩の筋肉がスムーズに協働して動くことで一連の動作が行えます。
さらに、食べる際には姿勢も大事な要素の一つです。適切な姿勢を保つことが難しいと、誤嚥のリスクが高まります。

口腔体操は、頬や舌の筋肉を動かす口腔機能向上プログラムですが、高齢者の誤嚥を予防する「嚥下体操」もこのプログラムに含まれます。
万が一、誤嚥してしまった場合でも「咳き込む」ことができれば気管に入ってしまった食べ物を吐き出すことができます。この「咳き込む」という動作には、背筋や腹筋、そしてしっかりと足を踏ん張る筋肉なども必要になります。
そのため、嚥下体操では腹筋や肺活量などの「咳き込む力」を鍛えるトレーニングも行います。

全身の筋肉が、それぞれの役割を果たすことで食事を楽しむことができ、万が一の場合でも安全を確保することができます。

食べるため以外にも

舌や口周りの筋肉をストレッチしたり動かしたりすることで、高齢者の口腔機能の低下に伴う摂食・嚥下障害や構音障害を予防することが可能です。
口腔体操は、食べるための筋肉のトレーニングだけではなく、表情を豊かにし、会話を楽しむことにもつながります。これは、使っている筋肉がほとんど同じためです。
筋肉は、動かすほどリハビリになり、バランスよく協働し合う動きへと改善されます。

高齢者の口腔体操を行うタイミング

口腔体操を実施する一番良いタイミングは、「食事の前」です。
口腔体操で取り組む「嚥下体操」や「だ液腺のマッサージ」により、お口や頬の筋肉を動かし、だ液を分泌しやすくしていきます。

嚥下体操により頬や舌などを動かすことで、だ液がよく出るようになり、飲み込みやすく食べやすくなりますので、誤嚥を防ぐことにもつながります。
毎日継続して取り組むことが大切になります。
お食事の前のお口の準備体操として、皆さんで楽しみながら取り組めるように、介護スタッフやご家族にも協力いただき、実践していきましょう。

 

口腔体操で取り組む「嚥下体操」のやり方と効果的に行うポイント

それでは嚥下体操のやり方をご紹介していきます。
こちらの体操は、車椅子や椅子に座って行えますので、周囲の人や物との間隔を十分に考慮して「無理や痛みのない範囲で」を心がけて、行なってください。

嚥下体操は、次の9つの項目で構成されています。

 

1.姿勢

まずは、リラックスして腰掛けた姿勢をとります。
姿勢を整えて座り、全身の筋肉バランスを整えましょう。

姿勢

2.深呼吸

お腹に手をあてて、ゆっくりと深呼吸します。
鼻から吸って、お口から吐きます。長く息を吐くようにしましょう。
嚥下体操を始める前に、気持ちや緊張した筋肉をリラックスさせます。

深呼吸

3.首の体操

ゆっくりと後ろを振り返る。左右ともに行いましょう。
耳が肩につくように、ゆっくりと首を左右に倒します。
首を左右にゆっくりと1回ずつまわします。

首には咀嚼や嚥下に必要な筋肉が多く集中しています。
高齢者によく見かける肩こりや円背、片麻痺があると首の筋肉が凝り固まっています。
首の筋肉をゆっくり動かして筋肉をほぐすことで、食べる準備を行いましょう。

首の体操

4.肩の体操

両手を頭上に上げ、ゆっくりと下ろします。
息を吸いながら肩をゆっくりと引き上げて、スッと力を抜くように息を吐きながら肩をストンと落とします。
肩を前から後ろ、後ろから前へゆっくりまわします。

肩の体操

 

5.口の体操

ゆっくり大きく口を開け10秒間保持します。
続いて、しっかり口を閉じて10秒間休憩します。
お口を開くときには、無理せずに痛みが出ない程度にしてください。
今度は、ゆっくりと口をすぼめたり、横に引いたりを繰り返します。

開口訓練はお口の周りの筋肉をほぐし、動かすためのトレーニングです。
大げさにお口を動かしましょう。飲み込みに関連する筋力をアップすることで、食事中の「むせ」などの症状改善につながります。

口の体操

6.頬の体操

頬をしっかりと膨らませます。
ストローで吸うように頬をすぼめます。

口腔内に空気をためたり、すぼめたりする頬の筋力トレーニングです。
しっかり噛めるようになるために、食べこぼしや鼻に食べ物が流れ込むことを防ぎます。

頬の体操

7.舌の体操

舌をベーっとできるだけ伸ばします。
舌を喉の奥の方に引きます。
舌で口の両端をなめます。
鼻の下、顎の先を触るように舌を伸ばします。

食べること、そして発音をするために欠かせない舌。唇や頬、お口周りや舌の筋力をアップすることで、お口の機能が高まります。だ液がよく出るようになり、舌がなめらかに動いて食べ物を飲み込みやすくなります。お顔の表情もイキイキしてきます。

舌の体操

8.パタカラ体操(発音練習)

単音の発音では「パ」「タ」「カ」「ラ」のように1音ずつ発音します。
連続の発音では「パパパ…」「タタタ…」「パタカラ、パタカラ…」のように連続して発音します。
文の発音では「パ・タ・カ・ラ」を含む文を発音します。よく使われるフレーズは「パンダの宝物」などです。

パタカラ体操は、舌や唇の運動を大きく活用する発声方法のため、嚥下機能にも発声機能(構音機能)にも効果的です。唇、舌の動きを目的別にトレーニングします。
同様に、発声しにくいパ行を活用して「パ・ピ・プ・ペ・ポ」も口腔体操として発声していくことをおすすめします。

パタカラ体操

9.咳ばらい

お腹を押さえて、「エヘン」と咳ばらいをします。
誤嚥した際に、「咳き込む」ためのトレーニングです。
強く咳ばらいをするためには、しっかり空気を吸えること(深い吸気)、声帯の機能が保たれていること(声帯の閉鎖)、腹筋などの息を吐くための筋力が強いこと(呼気筋による爆発的な呼出)が条件となります。これら3点を意識してトレーニングしましょう。
やりすぎてしまうと喉を痛めることもあるので2~3回程度でかまいません。

咳ばらい

 

 

 

口腔体操で取り組む「だ液腺マッサージ」のやり方と効果的に行うポイント

高齢になると、だ液は出にくくなります。そして、お口が乾燥していると、むせたり、飲み込みにくくなったりしてしまいます。
だ液の分泌を促すために、だ液腺を刺激するマッサージを行うように働きかけましょう。
お口の中には、「耳下腺(じかせん)」「顎下腺(がっかせん)」「舌下腺(ぜっかせん)」と呼ばれる「だ液」の出やすいポイントがあります。
3カ所あるだ液腺の中でも一番実感が得られるのが、「顎下腺」のマッサージといわれています。
高齢者の場合は、薬剤の副作用や加齢に伴い噛む力が低下することで、だ液の分泌量が減少しやすくなりますので、だ液腺をマッサージして、だ液分泌を促していきましょう!

 

耳下腺マッサージ

耳下腺マッサージ

耳たぶのやや前方、上の奥歯あたりの頬に人差し指から小指までの4本の指を頬に当てて、10回ほど円を描くようにマッサージしていく。5~10回繰り返します。

注意点
耳下腺の周囲にあるリンパ節や血流、迷走神経刺激に注意が必要です。
力を入れ過ぎないこと。数回で終わらせることが大切です。
やりすぎから血栓が血液の流れに乗り脳へ飛ぶことがあります。

 

顎下腺マッサージ

顎下腺マッサージ

顎のラインの内側のくぼみ部分です。指を当てて、耳の下から顎の先までやさしく押します。5~10回繰り返します。

注意点
首をもまないように注意してください。
頸動脈洞への刺激によって動脈圧が下降する反射現象によって、血圧が急降下することがあります。

 

舌下腺マッサージ(一番安全)

舌下腺マッサージ

舌下腺は、顎の先のとがった部分の内側、舌の付け根にあります。
顎の中心あたりの柔らかい部分に両手の親指を揃えて当て、10回ほど上方向にゆっくり押し当てます。

 

 

口腔体操で取り組む「早口言葉」

口腔体操として早口言葉も効果的です。
様々なバリュエーションがありますので、早口言葉の一例を紹介させていただきます。

生麦 生米 生卵
なまむぎ なまごめ なまたまご

除雪車 除雪作業中
じょせつしゃ じょせつさぎょうちゅう

青巻き紙 赤巻き紙 黄巻き紙
あおまきがみ あかまきがみ きまきがみ

赤パジャマ 青パジャマ 黄パジャマ 茶パジャマ
あかぱじゃま あおぱじゃま きぱじゃま ちゃぱじゃま

隣の客は よく柿 食う客だ
となりのきゃくは よくかき くうきゃくだ

裏庭には二羽 庭には二羽 鶏がいる
うらにわにはにわ にわにはにわ にわとりがいる

坊主が 屏風に 上手に 坊主の絵を 描いた
ぼうずが びょうぶに じょうずに ぼうずのえを かいた

この竹垣に 竹立て掛けたのは、竹立て掛けたかったから 竹立て掛けた
このたけがきに たけたてかけたのは たけたてかけたかったから たけたてかけた

蛙ぴょこぴょこ 三ぴょこぴょこ 合わせてぴょこぴょこ 六ぴょこぴょこ
かえるぴょこぴょこ みぴょこぴょこ あわせてぴょこぴょこ むぴょこぴょこ

抜きにくい釘 引き抜きにくい釘 釘抜きで抜く釘
ぬきにくいくぎ ひきぬきにくいくぎ くぎぬきでぬくくぎ

 
 

口腔体操のまとめ

リラックスする高齢者

 

ここまで、高齢者の誤嚥を予防する口腔体操で取り組む「嚥下体操」や「だ液線マッサージ」のやり方についてご紹介しました。
介護施設では、すでにパタカラ体操や早口言葉などに取り組んでいると思いますが、食事前の準備運動として舌や頬のトレーニングを行い、だ液腺を刺激するなど全体的に行なっていくと誤嚥予防に効果的です。

健康な状態と要介護の状態の間には、筋力や体力・活力が低下する「フレイル(虚弱)」と呼ばれる段階があります。
噛む力や舌の動きの悪化が食生活に支障を及ぼしたり、滑舌が悪くなることで人や社会との関わりの減少を招いたりすることから、口の機能が衰える「オーラルフレイル」は全体的なフレイル進行の前兆として指摘されています。
しかし、早めに発見して口腔体操など適切な対応を行うことにより改善できる状態でもあります。

また、訪問歯科診療の現場において歯科衛生士は、口腔機能の低下が認められる、または低下する恐れがある患者さんに対して、口腔機能の回復・維持に関する実地指導を行うことで訪問歯科衛生指導料を算定することができます。

高齢者の皆さんが誤嚥を心配せず、いつまでもご自身のお口でお食事が摂れるように、口腔体操とそのやり方を理解して効果的な実地指導と加算の算定をしていきましょう!

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ぜひ、DSアカデミーの摂食嚥下コースもチェックしてみてください。

 
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