ストレスが引き起こす口腔疾患への影響について知る
こんにちは。Dキャリアプラス編集部です。
4月1日は「こころのヘルスケアの日」という記念日でした。新年度の始まりは忙しく変化が多いため、こころのヘルスケアに意識して欲しいとの思いから4月1日になったそうです。
新年度が始まると入学や入社、異動などで環境が変わる方がたくさんいらっしゃいます。4月は夢中になって過ごし、連休が明けたころに心身の不調を訴えることも多いことから、今回は「ストレス」と「口腔疾患」についてご紹介します。
ストレスと口腔疾患の関係
心理的なストレスが加われば、お口の健康にもさまざまな反応が現れ、障害が起きてしまうこともあります。ここでは、ストレスと口腔疾患の関係についてご紹介します。
ストレスと口腔疾患のメカニズム
ストレスが引き起こす身体内反応とは
厚生労働省の「労働者健康状況調査」によると、「仕事や職業生活でストレスを感じている」労働者の割合は2012年のデータで約60%。働く方の半分以上の方はストレスを抱えていることになります。
ストレスは、心だけでなく身体全体にさまざまな反応を引き起こします。ストレスを感じると自律神経が乱れ、副交感神経よりも交感神経が優位になりやすくなります。この状態では、血流が悪化する、免疫力が低下する、そしてホルモンバランスが崩れるといった身体内の変化が生じます。このような反応は、お口の健康にも直接的な影響を及ぼすことがわかっています。
[参考]
厚生労働省「平成24年 労働者健康状況調査」
働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳 「ストレス軽減ノウハウ 1ストレスとは」
ストレスが口腔環境に与える影響
ストレスを感じることで、唾液の分泌量が減少することがあります。唾液は口腔内の自浄作用を担い、細菌の繁殖を抑える役割を果たしますが、唾液が不足するとむし歯や歯周病のリスクが高まります。また、口腔が乾燥することにより、口臭が強くなる可能性もあります。これらの変化により、ストレスを抱える人は口腔内環境が悪化しやすい傾向にあるため注意が必要です。
また、食いしばりや顎に力を入れたりすることでもさまざまな影響が現れることがあります。
[参考]働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳 「身体のストレス反応から考える職場のメンタルヘルス対策」
ストレス関連口腔疾患の具体例と症状
ストレスがお口の健康に与える影響について紹介しましたが、ここでは具体例についてみてみましょう。
歯の痛みと精神的ストレスの関連性
ストレスを感じると無意識に歯を食いしばったり、顎に力を入れたりすることがあり、これが原因で顎関節や歯に過度な負荷がかかることがあります。この結果、歯の根元や筋肉が疲労し痛みを引き起こす場合があります。
また、精神的な抑圧は感覚を過敏にさせるため、普段は気にならない軽微な刺激でも痛みとして認識されることがあります。
ストレスによる知覚過敏や歯の摩耗
ストレスは知覚過敏や歯の摩耗にも大きな影響を与える要因となります。ストレスを抱えることで、歯ぎしりや食いしばりが発生しやすくなります。これらの行動が続くと、歯の表面を覆うエナメル質が削られてしまい、内部の象牙質が露出することで知覚過敏が引き起こされます。知覚過敏が進行すると、冷たいものや熱いもの、甘いものに対して鋭い痛みを感じるようになり、日常生活に負担が増えることがあります。
口腔乾燥症や唾液減少
ストレスによって、自律神経のバランスが崩れると唾液の分泌が減少することがあります。この唾液減少は口腔乾燥症として知られ、口の渇きやネバネバ感といった症状が現れます。唾液は口内の自浄作用や細菌の抑制に大きな役割を果たしているため、分泌が減少することでむし歯や歯周病、さらには口臭が発生するリスクが高まります。
また、ストレスを強く受けた状態や、お酒を飲み過ぎた時には眠りが浅くなり、歯ぎしりや食いしばりが助長されて歯や歯を支える組織に異常な力が加わるため、歯周病が重症化しやすくなります。
また、生活習慣病や精神神経系の治療薬には、唾液分泌を抑制する副作用を持つ薬が多く、口の乾燥によってむし歯が多発してしまうケースも見られます。
ストレスと顎関節症
歯ぎしり・食いしばりに加え、弱い力でも上と下の歯を接触させる癖(上下歯列接触癖)が昼夜を問わず長期間続くと、あごや筋肉に持続的に負担がかかってしまい、さまざまな障害が起きる可能性があることも示されています。
とくにノートパソコン、スマートフォンやタブレットなどの携帯情報端末を長時間、前かがみになって使用しているときには上下の歯がかみ合わせやすくなり、さらにストレスが強い状況下では、咀嚼筋(そしゃくきん)の活動が増して強くかみしめてしまう傾向にあることがわかっています。
詳しくは一般社団法人日本顎関節学会のHPまで
非歯原性歯痛とストレスの関連性
ストレスが原因で生じる歯痛には、実際には歯自体に問題がない「非歯原性歯痛*」という症状もあります。このタイプの痛みは、頭頸部の筋肉緊張や神経系の異常によって引き起こされることが多く、歯科医で診察を受けた場合でも具体的な物理的問題が見つからないことがあります。非歯原性歯痛の治療には、ストレスの軽減や心身のリラクゼーションが有効です。また、歯科的な診断と合わせて精神面のケアを行うことが根本的な解決につながる場合もあります。
[参考] *お口のことならなんでもわかるテーマパーク8020「非歯原性歯痛」
ストレスによる口腔疾患を防ぐ方法
ストレスと向き合いながら歯を守る意識
口腔内とストレスの関係は総合的なものであり、ストレスがお口の健康に及ぼす影響は個人差があります。ストレスによって口腔疾患のリスクが増加する方もいれば、影響の少ない場合もあります。ですが、適切なストレス管理と口腔ケアを行うことは、お口の健康を維持するためにとても重要なことです。
【メンタルヘルスの効果的なセルフケアの方法】
セルフケアの取り組みにはさまざまな種類があります。厚生労働省が提案するセルフケアの方法には以下のようなものがあります。
- 体を動かす
- 今の気持ちを書いてみる
- 腹式呼吸をくりかえす
- 「なりたい自分」に目を向ける
- 音楽を聞いたり、歌を歌う
- 失敗したら笑ってみる
気分転換を図り、ストレス解消を促すことが挙げられます。仕事の合間にできる気分転換の方法やストレスを解消できる方法を見つけられるように、ちょっとしたアドバイスができるといいですね。
[参考] 厚生労働省「こころと体のセルフケア」
【Dキャリアプラスコラム】ストレスとの上手なつき合い方を考える「ストレスマネジメント」を始めよう 2024.03.28
マウスピースの活用とナイトガードの効果
歯ぎしりや食いしばりがストレスによって悪化する場合、マウスピースやナイトガードを使用することで、歯への物理的な負担を軽減できます。とくに睡眠中に無意識に行われる歯ぎしりには、オーダーメイドのナイトガードが効果的です。これにより、歯の摩耗や知覚過敏、顎関節への影響を防ぐことが期待できます。適切な装着方法を指導し、正しく使用することで、ストレスが引き起こす歯科疾患を予防しやすくなります。
顎関節症ストレッチの例
【咬筋マッサージ】
「咬筋」とはものを噛む時に使う筋肉で、左右の顎の付け根(耳の付近)から頬の広範囲にあります。顎のえらが張っている所から2~3cmほど斜め前の場所に、人差し指などの指を当て、円を描くようにマッサージしてみましょう。ストレッチの際には、体が温まっていると筋肉がほぐれやすくなるため、入浴中や入浴後に行うとより効果的と言われています。
【側頭筋マッサージ】
「側頭筋」は左右のこめかみから頭頂部まで広がる筋肉で、かみしめた際にこめかみがぴくぴくと動く位置に側頭筋はあります。この部分をマッサージする際には、こめかみに指を当てて軽くかみしめ、筋肉がふくらむような動きをする部分を特定したうえで、その箇所に人差し指などを当てながら、円を描くようにします。
【口のストレッチ】
顎関節症を改善するためには、口全体のストレッチも欠かせません。上を向いて口を大きく開けるだけでも効果があります。加えて手で口の両側をすぼめながら、上下に口を大きく開けるようにすると、さらに大きな効果が見込めます。
[参考] 矯正歯科ネット「顎関節症がつらい方へ 自宅で簡単!ストレッチ5つ」
まとめ
いかがでしたか?今回はストレスと口腔疾患について紹介しました。ストレスは私たちの生活の一部ともいえ、完全に回避することは難しいですが、ストレスを管理することで身体に与える影響を最小限に抑えるようにしたいですね。口が乾燥しているときや緊張感が強いときには、ガムをゆっくりと咀嚼すると、唾液腺が刺激されて唾液の分泌が促されるだけでなく、顎や顔面の筋肉を使って噛むという行為が、心もリラックスさせる効果があるといわれています。リラックスすることや規則正しい食事、睡眠を心がけることも、お口の健康を守るためにとても大切なことがわかりました。
4月の記念日についてのコラムはこちら
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