禁煙支援は歯科医療のチーム戦!現場でできる実践ポイントまとめ
こんにちは。Dキャリアプラス編集部です。
今回は、喫煙が口腔内や全身の健康に及ぼす影響をテーマに、歯科衛生士・歯科助手として現場でできる禁煙支援について考えてみたいと思います。
目次
喫煙が引き起こす主な健康被害
喫煙は、がんや脳卒中、心疾患、COPD、歯周病、口腔がんなど、数多くの疾患と関連しています。なかでも口腔領域への影響は深刻で、歯科医療に携わる私たちが無視できない問題です。
さらに、近年は紙巻たばこだけでなく、加熱式たばこや電子たばこも広く使用されています。新しい喫煙製品についても、正確な情報を把握し、患者さんに説明できるようにしておくことが大切です。
成人喫煙率
成人喫煙率(厚生労働省国民健康・栄養調査 令和5年の調査データ追加)では、現在習慣的に喫煙している者の割合は 15.7%で、男性 25.6%、女性 6.9%となっています。
【出典】公益財団法人 健康・体力づくり事業財団「最新たばこ情報」成人喫煙率(厚生労働省国民健康・栄養調査)
喫煙しているたばこ製品
現在習慣的に喫煙している方が使用しているたばこ製品の種類は、「紙巻たばこ」の割合が男性 69.7%、女性 63.2%であり、「加熱式たばこ」の割合が男性 38.5%、女性 42.3%。
たばこ製品の組合せについて、「紙巻たばこのみ」、「加熱式たばこのみ」、「紙巻たばこ及び加熱式たばこ」の割合は、男性では、60.5%、29.2%、9.2%であり、女性では、56.2%、35.3%、7.0%。となっています。
【出典】公益財団法人 健康・体力づくり事業財団「最新たばこ情報」喫煙しているたばこ製品(厚生労働省国民健康・栄養調査)
加熱式たばこと電子たばこの違いを把握しよう
たばこにはさまざまな種類があります。代表的な紙巻たばこをはじめ、葉巻やパイプといった有名なものから加熱式たばこなどの新しいたばこ、さらに電子たばこなどもあります。
ここでは「加熱式たばこ」と「電子たばこ」の違いについて紹介します。
喫煙が及ぼす口腔への影響
たばこの煙は、まず最初に口の中(口腔)を通過します。そのため、口腔は喫煙による悪影響が最初に現れやすい場所でもあります。煙が直接触れることで生じる影響に加え、体内に取り込まれた有害物質が血液を通じて間接的に影響を及ぼすこともあります。
歯周病リスクの上昇
非喫煙者に比べ2〜6倍リスクが高くなり、治療効果も低下します。
口腔がんの可能性
煙に含まれる発がん性物質が口腔内に直接作用し、がんの発症リスクを高めます。
審美性への影響
歯の変色(ヤニ)や着色、口臭、味覚障害も喫煙による代表的な問題です。
子どもや周囲への影響にも目を向けて
受動喫煙による健康被害は、家族や同僚など喫煙者の周囲にも及びます。とくに子どもへの影響は深刻で、成長や免疫に悪影響を及ぼすことが明らかになっています。
歯科医療現場でできる禁煙支援
口腔ケアを通じた気づきの提供
歯周病や口臭、変色などを通じて、患者さん自身が喫煙による影響を実感しやすいのが歯科の強みです。定期健診時にリスクを説明することが、禁煙の第一歩になります。
正確な情報提供と動機づけ
「加熱式たばこなら安心」などの誤解を解き、禁煙のメリットを具体的に伝えましょう。否定的ではなく、共感的な伝え方を心がけることが信頼につながります。
歯科衛生士の役割
患者さんに近い立場だからこそ、日々のセルフケアや禁煙のサポート役を担うことができます。具体的なツールや習慣づくりの提案も効果的です。
禁煙支援に使えるアプローチ
5Aモデルの活用
Ask(尋ねる)/Advise(助言する)/Assess(評価する)/Assist(支援する)/Arrange(フォローアップ) 段階的な支援が可能です。
まず、たばこと口腔内疾患の関係性を患者さんに話し、喫煙歴や本数を具体的に尋ねます(Ask)。
次に、喫煙が歯周病やその他のリスクを高めることを丁寧に伝え、禁煙を促します(Advise)。
患者さんの禁煙意思を確認し、意欲の有無を評価した上で(Assess)、禁煙補助薬や地域の禁煙プログラムを紹介し(Assist)、継続的なフォローアップを手配します(Arrange)。
動機づけ面接法(MI)
相手の意欲を引き出す質問や未来像を共有し、禁煙に向けた前向きな気持ちを育てるアプローチです。
否定的な表現を避けながら、患者さん自身がたばこをやめるメリットを自覚できるよう問いかけることが重要です。
たとえば、「歯周病治療の効果を高めるために、加熱式たばこでも口腔内にリスクがあることを知っていますか?」といった質問を投げかけることで、患者さんの認識を深められます。
禁煙ステージに応じた対応
無関心期〜実行期まで、患者さんの状態に応じて対応を変えることが大切です。
喫煙をやめる意思が全くない段階(無関心期)では、禁煙のメリットやリスク予防について軽く情報提供する程度が適切です。
一方で禁煙を検討している段階(関心期)では、具体的な禁煙計画の立案を支援します。この際、喫煙が歯周病や口腔がんを引き起こすリスクを強調することが有効です。
また、禁煙を試みたが失敗してしまった場合(挫折期)には、責めるのではなく、サポート体制や新しい挑戦方法を相談することで、再挑戦を促します。
禁煙補助ツールの活用
ニコチンガムやパッチ、禁煙アプリなども紹介可能です。
患者さんに合った方法を提案しましょう。使用方法を具体的に説明することで、患者さんが禁煙に対する不安を軽減できます。患者さんに合ったツールを提案し、最適な選択肢を提供することが重要です。
チームで取り組む禁煙支援
歯科医師と歯科衛生士、そして歯科助手が役割を分担し、患者さんに寄り添った継続的なサポートを行うことが禁煙成功の鍵です。さらに、地域の医療機関や禁煙外来と連携することで、より効果的な支援が可能になります。
まとめ
禁煙支援は“生活の質”を高めるアプローチ
禁煙支援は、歯科疾患の予防にとどまらず、患者さんの全身の健康、そして人生の質を向上させる取り組みです。歯科衛生士・歯科助手だからこそできるサポートを通じて、患者さんの「変わりたい気持ち」に寄り添っていきましょう。
【毎月22日は禁煙の日】
2010年(平成22年)2月22日、禁煙推進学術ネットワークでは、スワンスワン(吸わん吸わん)で禁煙を!をスローガンに、毎月22日を「禁煙の日」として、日本記念日協会に登録しました。これは、喫煙の害や禁煙の重要性に関する知識を普及・啓発することや、受動喫煙防止のための社会的な禁煙推進を活発化させることなどを目的として制定されたものです。
「一般社団法人 禁煙推進学術ネットワーク」では禁煙推進活動のため、資料やツールの提供などを行なっています。
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