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ウェルビーイングの鍵は口腔健康にあり?高齢者の暮らしとの関連を解説

ウェルビーイングコラムタイトル

こんにちは。Dキャリアプラス編集部です。
みなさんは「ウェルビーイング」という言葉を聞いたことはありますか?
ウェルビーイング(Well-being)は、well(よい)とbeing(状態)からなる言葉です。
今回は、口腔の健康とウェルビーイングとの関連性についての調査が行われ、研究成果が公開されましたので、紹介したいと思います。

 

口腔健康とウェルビーイングの関係

東京科学大学大学院 医歯学総合研究科 歯科公衆衛生学分野のKewei Wang大学院生、相田潤教授らの研究グループは、日本の高齢者を対象に口腔の健康(歯の本数および歯科補綴物の使用)と多面的なウェルビーイングとの関連性について調査を行い、その研究成果が2025年3月17日に公開されました。

[出典] 東京科学大学 プレスリリー「高齢者の歯の本数とウェルビーイングの関係を解明」2025年3月17日 公開
ウェルビーイングイラスト

ウェルビーイングとは?

英語の「well」と「being」を組み合わせた「ウェルビーイング」は、一般的に「健康、幸せ、繁栄している状態」と定義されており、この概念が広まったのは世界保健機関(WHO)の憲章によるものです。1948年に施行されたこの憲章の前文には、「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます。」と記されています(日本WHO協会仮訳)。ここで「ウェルビーイング」は「満たされた状態」と訳されています。

[参考] 公益社団法人 日本WHO協会「世界保健機関(WHO)憲章とは」

 

高齢者にとってのウェルビーイングの意味

高齢者にとって、ウェルビーイングとは身体的健康、精神的安定、社会的つながりという3要素が満たされた状態を指します。この概念は、単に長生きするだけでなく、充実した生活を送るための基盤と言えます。とくに日本では、平均寿命の延びとともに「健康寿命」の維持が課題となっており、ウェルビーイングの実現が高齢化社会の幸福度を高めるカギとされています

  • 身体的健康:健康な食生活や適度な運動を通して得られる健全な身体状態を指します。
  • 精神的健康:ストレスの管理や感情の安定、自己実現を通した心の充実を意味します。
  • 社会的充足感:他者との良好な関係やつながり、地域コミュニティとの連携から得られる人間関係の満足感を含みます。

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口腔健康が心身の健康に与える影響

口腔健康は心身の健康に密接に関連しています。口腔内に疾患がある場合、日常の食事が困難になり、必要な栄養を摂取しにくくなることから、全身の健康状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、慢性的な歯の痛みや口腔感染症は、心理的なストレスや疲労感につながる場合があります。
東京科学大学の研究では、口腔健康が維持されている高齢者ほど身体的・精神的な幸福感が向上し、ウェルビーイングスコアが高いことが示されています。

 

適切なケアや補綴物で高齢者のウェルビーイングを高める

高齢者にとって、歯の本数は幸福感と密接に関わっています。東京科学大学の研究では、0~9本の歯を持つ高齢者であっても、歯科補綴物を使用している人は使用していない人よりもウェルビーイング指数が平均0.21ポイント高いことが明らかになりました。
また、20本以上の歯を持つ人は、それが幸福感の向上と生活の質の向上に寄与しているとされています。
むし歯や歯周病でご自身の歯が失われた高齢者でも、適切なケアや補綴物の活用によってウェルビーイングを高める可能性があることが示唆されています。

 

口腔健康が社会的交流や生活の質に与える影響

口腔の健康は、社会的交流や生活の質にも直接的な影響を与えます。高齢者が健康的な歯を保つことで食事や会話を楽しみ、社会的なつながりが維持・促進されます。一方で口腔に問題がある場合には他者との交流が減少し、孤立感や低い幸福感につながる可能性があります。東京科学大学の調査結果では、口腔健康が良好な高齢者ほど、友人や家族との関係性や人生への満足度が高いことが分かっています。

 

高齢者の口腔健康を支える具体的な方法

高齢者にとって、口腔の健康を維持するためには日々の歯みがきと、定期的な歯科健診が重要です。歯科健診を定期的に受けることで、口腔トラブルを早期に発見し、適切な治療が可能になります。

診療所高齢者と入れ歯

 

歯科補綴物(入れ歯やインプラント)の役割

歯科補綴物である入れ歯やインプラントは、歯を失った高齢者にとって大きな役割を果たします。東京科学大学の研究においても、歯科補綴物を使用している人のウェルビーイング指数が高いことが報告されています。
入れ歯やインプラントは咀嚼機能を補完し、栄養摂取を改善するだけでなく、自然な会話を可能にし社会的交流を支える重要な存在です。

 

栄養状態をサポートするための口腔ケア

口腔健康は高齢者の栄養状態にも密接に関係しています。咀嚼がスムーズであれば、肉や野菜など栄養価の高い食品を問題なく摂取できるため、バランスの取れた食事が可能になります。一方で、歯が少なく適切な補綴物を使用していない場合には食事内容が制限され、栄養不足につながる可能性があります。
日々の口腔ケアは、単に歯や歯茎を健康に保つだけでなく、健康的な食生活を支えるためにも重要です。
歯みがきだけでなく、舌の清掃や殺菌効果のある洗口液の使用などを総合的な口腔ケアの一環として取り入れることも大切になります。

 

口腔健康がウェルビーイングの向上と健康寿命を延伸する

講習会イメージ

医療と地域社会が連携する取り組み

高齢者の口腔健康を改善するためには、医療機関と地域社会が連携して取り組むことが重要なため、地域住民が参加できる健康教育や口腔ケアの啓発活動が効果的です。
歯科補綴物の正しい使用方法やケア方法などを教育することで、歯の本数が少ない高齢者でもウェルビーイングスコアを向上させることが期待できます。
また、口腔健康の維持が認知症予防においても重要な役割を果たすことが明らかになっています。歯科補綴物を活用して口腔機能を維持することで、適切な栄養摂取や社会的なつながりを保つことができ、認知症の予防効果が考えられます。

 

まとめ

今回の調査では、歯の本数が高齢者の全体的な健康やウェルビーイングに深く関係していることが明らかになりました。
歯の本数が少なく、歯科補綴物が必要な高齢者へ、歯科補綴物の使用を促進し、ウェルビーイングの向上につなげることが、今後の課題となります。
Dキャリアプラスでは、高齢者に対する口腔ケアのセミナーを開催しています。経験豊富な講師が事例なども交えて解説しますので、スキルアップを目指す方はぜひご参加ください。

 

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