ヒヤリ・ハットを防ぐ!歯科衛生士の安全意識向上ガイド
診療中に「ヒヤッとした」「ハッとした」経験はありませんか?
それは事故には至らなかったものの、大きな学びとなる“ヒヤリ・ハット”かもしれません。
今回は、公益財団法人 日本医療機能評価機構が実施する「歯科ヒヤリ・ハット事例収集等事業」の報告から抜粋して、事例などを紹介したいと思います。
目次
ヒヤリ・ハット事例とは?
近年、医療安全の向上を目的とし、歯科分野でもヒヤリ・ハット事例の収集と活用が進められています。
歯科ヒヤリ・ハット事例収集等事業
公益財団法人 日本医療機能評価機構が実施する「歯科ヒヤリ・ハット事例収集等事業」では、歯科診療所からヒヤリ・ハット事例を積極的に収集し、情報を共有することで再発防止策を講じることを目的としています。
【出典】公益財団法人 日本医療機能評価機構 歯科ヒヤリ・ハット事例収集等事業
歯科衛生士が直面するヒヤリ・ハット事例
ここでは、公益財団法人 日本医療機能評価機構「歯科ヒヤリ・ハット事例収集等事業の報告」から、いくつかをピックアップして紹介したいと思います。
【1】器具の誤使用・破損に関連したケース
歯科衛生士が業務中に直面する可能性のあるヒヤリ・ハット事例のひとつに、器具の誤使用や破損に関するケースがあります。
スケーラーやミラーなどの歯科器具を使用する際、適切な操作方法を誤った結果、患者さんの口腔内を傷つけてしまうリスクが挙げられます。
また、器具が破損し、その一部が患者さんの口内に残留するという事態も報告されています。こうした問題を防ぐためには、器具の取り扱いに関する知識と技術を確実に習得するとともに、日常的な器具の点検を徹底し、破損の兆候を早期に発見することがリスク軽減につながります。
【2】患者とのコミュニケーションエラー
患者さんとのコミュニケーションエラーも、歯科衛生士が経験しやすいヒヤリ・ハット事例のひとつです。
患者さんの症状や体調についての質問が不足したり、治療内容について説明が不十分だった場合、患者さんが治療中に意図せずに動いてしまい、予期せぬ事故を招くケースがあります。
また、患者さんがアレルギーや既往歴といった重要な情報を伝え損ねることで、意図しない処置や処方が行われる可能性もあります。
こうした事例を未然に防ぐためには、患者さんとの丁寧な対話や情報収集が欠かせません。ヒヤリ・ハット事例収集等事業でも、コミュニケーション不足が原因となる問題への対策が重要視されています。
【3】誤飲や誤嚥事故のリスク
歯科治療中に発生しやすいリスクとして、誤飲や誤嚥事故が挙げられます。治療中に器具を患者さんの口内に落としてしまい、それを誤飲してしまったケースがあります。対策として、ラバーダムを適切に使用すること、器具の取り扱いや取り回しに細心の注意を払うことなどが求められます。
また、万一の事故に備え、対応手順をスタッフ間で共有しておくことも大切です。
ヒヤリ・ハット事例報告書で学ぶ
公益財団法人日本医療機能評価機構が開始した「歯科ヒヤリ・ハット事例収集等事業」では、2023年10月に事例報告が開始され、報告件数は約3か月間で27件にのぼりました。報告された内容には、歯科治療や薬剤・処方、医療機器、そして歯科技工に関連する事例が含まれ、具体的な事例や対策について紹介されています。
[出典] 公益財団法人日本医療機能評価機構「歯科ヒヤリ・ハット事例収集等事業」報告書
日々の歯科現場で実践できる安全対策
事前確認とダブルチェックを徹底する
歯科治療において事前確認とダブルチェックの徹底は、ヒヤリ・ハット事例を防ぐ最も基本的な取り組みのひとつです。治療に使用する器具や薬剤が適切に準備されているか、使用する医療機器が正常に動作しているかなど、開始前の総合的な確認が重要です。
ミスを防ぐ環境を整え、患者さんの安全を第一に考えた歯科診療を実現しましょう。
教育・訓練の強化でリスクを減らす
医療安全に関する研修やトレーニングを受けることも大切です。実際の事例をもとにシミュレーション形式で行うことで、現場感覚を磨きましょう。歯科ヒヤリ・ハット事例収集等事業などで報告された具体的なケースを活用し、事例から学ぶ姿勢を持つことでリスクを低減することができます。
訪問歯科診療における注意点
訪問歯科診療では、独特の環境や状況により、特有のヒヤリ・ハット事例が発生する場合があります。患者さんのご自宅や施設で治療を行う際には、使用器具や薬剤、患者さんの健康状態を事前に詳細に確認することが重要です。とくに高齢者の場合、誤飲や誤嚥のリスクが高まるため、器具の取り扱いには細心の注意が必要です。
患者さんやそのご家族とのコミュニケーションをしっかりと行い、治療内容や注意事項を丁寧に説明することで、不安や誤解を未然に防ぎましょう。
また、帰る際には忘れ物がないかを確認することも重要なリスク管理の一環です。
まとめ
今回は、ヒヤリ・ハット事例について紹介しました。
このようなヒヤリ・ハット事例の報告を促進するためには、職場内での情報共有を活発化させ、スタッフが安心して報告できる環境を整える必要があります。
相談しやすい環境づくり、再発防止に向けた前向きな話し合いを通して、安全安心に働ける組織文化をつくっていきましょう。
また、報告しやすいシステムやツールの導入も有効となります。
よりよい歯科医療を提供するために、ヒヤリ・ハット事例をご活用ください。
2025年5月募集開始の講座情報
DSアカデミーDSアカデミー[対面セミナー]
訪問口腔ケアコースエクスプレス(仙台) 開催日時:6月14日(土)10時~16時
開催場所:宮城県仙台市青葉区北目町
▶ 詳細とお申し込みはこちらから
摂食嚥下コースエクスプレス(仙台) 開催日時:6月15日(日)10時~16時
開催場所:宮城県仙台市青葉区北目町
▶ 詳細とお申し込みはこちらから
摂食嚥下コースエクスプレス(東京) 開催日時:6月22日(日)10時~16時
開催場所:東京都千代田区丸の内
▶ 詳細とお申し込みはこちらから
DSアカデミー[動画視聴型オンラインセミナー]
【配信期間】 2025年5月20日(火)0:00~2025年12月31日(水)23:59
【受付最終時刻】 ~2025年12月31日(水)17:00までとなります
訪問口腔ケアコース 初級
訪問口腔ケアコース 中級
訪問口腔ケアコース 上級
摂食嚥下コース 初級
摂食嚥下コース 中級
摂食嚥下コース 上級