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歯みがきが腸内環境を改善? 驚きの研究結果で考えるオーラルケア

歯みがきが腸内環境を改善?コラムタイトル

 

こんにちは。Dキャリアプラス編集部です。
先日、東北大と東北福祉大のチームが「歯みがきをよくする子どもは便秘にもなりにくいらしい」といった研究結果を約8万組の母子のデータからとりまとめ、科学誌サイエンティフィック・リポーツに発表しました。
今回は、この研究発表についてご紹介したいと思います。

 

歯みがきと腸内環境の関係とは?

東北大学の調査結果:8万人を対象にした分析

東北大学病院顎口腔機能治療部の土谷忍助教らの研究グループは、環境省が実施している「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査*1)」のデータをもとに、83,660人の母子を対象にした大規模な分析を行いました。
この研究では、とくに幼児期の機能性便秘*2と日々の歯みがき習慣との関連性が調査されました。
幼児期における適切なオーラルケアが便秘リスクを抑える可能性が示唆されるなど、これまで注目されていなかった興味深い結果が得られています。

*1:エコチル調査:胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、2010年度より全国で約10万組の親子を対象として環境省が開始した、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査である。臍帯血、血液、尿、母乳、乳歯等の生体試料を採取し保存・分析するとともに、追跡調査を行い、子どもの健康と化学物質等の環境要因との関連を明らかにすることを目的とする。エコチル調査は、国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを、国立成育医療研究センターに医学的支援のためのメディカルサポートセンターを、また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学等に地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関が協働して実施している。

*2:機能性便秘:排便困難または排便回数の減少、排便時の痛み、硬い便の排出、および/または便の不完全な排出感覚などのいきみや不快感の症状が特徴。

歯みがき回数と機能性便秘との関連性

調査によると、歯みがきの回数と機能性便秘のリスクには密接な関連があることが分かりました。たとえば、毎日の歯みがきが「1日2回以上」の場合に比べて、「1日1回」の子どもでは3歳時点で便秘の罹患率が1.12倍高くなり、「1日1回未満」では1.46倍に上昇しました。この傾向は4歳時点でも保持されており、毎日の歯みがき習慣と子どもの機能性便秘が関連している可能性が示唆されました。

歯みがき回数のデータ
 
[出典] 東北大学病院 2025年3月 7日 11:00 | プレスリリース・研究成果

 

1日2回以上の歯みがきが推奨される理由

1日2回以上の歯みがきが推奨される理由として、口腔細菌が腸内細菌に影響を与えるというメカニズムが考えられます。口腔内の細菌が腸に到達することで腸内環境を乱し、便秘のリスクを増大させる可能性があります。一方で、1日2回以上の歯みがきを行うことで、口腔内の細菌をコントロールでき、結果的に全身の健康や腸内環境の安定が期待されます。

 

食事や生活習慣と歯みがきの連携の重要ポイント

歯みがき習慣の改善だけでなく、食事や生活習慣も便秘予防に重要な役割を果たします。食物繊維を豊富に摂取し、腸内細菌に良い影響を与える食習慣を整えることで、口腔ケアとの相乗効果が得られます。
また、規則正しい生活リズムを維持することで、便秘のリスクがさらに軽減されるとされています。家族全体で歯みがきと健康的な食事を意識した生活を実践することが、子どもたちの健康を長期的に支えることになるでしょう。

子どもの生活習慣

 

子どもへの歯みがき教育のポイント

乳幼児期から正しい歯みがき習慣を教えることは、後の健康に大きな影響を与えます。子どもが嫌がる場合は楽しい音楽を流したり、歯みがきのタイマーを使ってゲーム感覚で行うのがおすすめです.

歯みがきできているかな

 

腸内細菌に良い食事とオーラルケアの相乗効果

腸内環境を整えるには、適切な歯みがきとともに腸内細菌に良い食事を意識することが大切です。
たとえば、ヨーグルトや納豆などの発酵食品は腸内細菌を活性化し、消化を促進します。これに加え、食後の歯みがきを忘れずに行うことで、腸と口腔の両方の細菌バランスを整える相乗効果が得られます。
また、水分をしっかり摂ることや、食物繊維の豊富な食事を心がけることで便秘になりにくい体作りが可能です。さらに、ガムを噛むなどの軽い咀嚼運動が唾液分泌を促進し、腸運動を活発にする効果も期待できるため、日常生活に取り入れると良いでしょう。

 
腸内環境こども

 

子どもが便秘のときにおすすめの食べ物

【食物繊維を含む食品】

食物繊維には「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の2種類があり、それぞれ便秘に対して異なる働きをしてくれます。海藻を味噌汁やごはんに入れる、おやつをバナナや干し芋に変えてみるなど、水溶性・不溶性どちらもバランスよく食事に取り入れてみましょう。

水溶性食物繊維:便を柔らかくして腸内をスムーズに移動できるようにしてくれます。昆布・ひじき・わかめ・こんにゃくなどに多く含まれます。
不溶性食物繊維:腸の運動を活発にする、便の量を増やす役割があります。バナナ・ブルーベリー・かぼちゃ・根菜・きのこ・豆類・芋類などに多く含まれます。

【発酵食品】
腸内環境を整えてくれる善玉菌を含んでいます。ヨーグルトや納豆、味噌、チーズ、キムチなどの発酵食品は、毎日の食卓に取り入れられる食材が多いので、子どもが食べやすいものから試してみましょう。

【オイル類】
オイルに含まれる成分が腸を刺激して動きを活発にし、排便を促すと考えられています。また便のすべりを良くして、腸内を便が移動しやすくする働きがあるとされているため、オリーブオイル、ごま油、エゴマ油、ココナッツオイルなどのオイル類もおすすめです。炒め物やパンにつける、サラダやスープにかけるなどしてオイル類を上手に取り入れてみましょう。

 
便秘解消によいたべもの

 

まとめ

研究で得られたデータから、私たちの生活習慣をより健康的にするための具体的な工夫を見つけることができます。
まず、子どもの歯みがきを1日2回以上行う習慣を徹底することが、便秘予防や腸内環境改善に効果的です。保護者の方に子どもの歯みがき指導を行う際には、適切なブラッシング法をお伝えするだけでなく、歯みがきカレンダーの活用など楽しく継続できるコツがアドバイスできると良いですね。

歯みがきカレンダーがダウンロードできるサイトもあります。ぜひチェックしてみてください。

 

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