コラム

Dキャリアプラス

患者さんにおすすめしたい「舌トレーニング」の効果と方法について

患者さんにおすすめしたい「舌トレーニング」の効果と方法についてコラムバナー

 

こんにちは。Dキャリアプラス編集部です。

みなさんは「舌の働き」について、患者さんに正しくお伝えできていますか?
今回は改めて「舌の働き」や「舌トレーニング」についてお話ししたいと思います。

 

舌の働きについて

舌は柔らかく筋肉が発達しているため、多様で複雑な運動ができます。
とくに重要な働きとして、咀嚼運動や嚥下運動の補助作用が挙げられ、以下の機能などに関わっています。

  • 咀嚼(そしゃく)
  • 嚥下(えんげ)
  • 構音(発声)
  • 味覚

構音の仕組みについてのイラスト
咀嚼運動や嚥下運動をスムーズに行うことができるのは、舌の形態や運動が反射的に調節されることによるものです。
また、歯の移動を防ぎ、歯列の位置を一定に保つなど、舌は歯列の形成にも関係しています。

舌にはさまざまな機能や働きがあり、舌の運動機能が低下すると、咀嚼中に舌を咬んでしまう、食渣が残る、上を向かないと飲み込めない、などの症状が現れます。

舌は筋肉です

舌はほぼ筋肉で、見えていない根元部分が大きく、重さは約200グラムあります。りんご1個分の重さです。
この根元が舌骨についているだけで、そこから先は支えがないため、筋力が弱ってくると垂れ下がった「低位舌(落ちベロ)」になってしまいます。
「低位舌」になると、「全身の筋力の低下(サルコペニア)」や「口呼吸になりやすい(ドライマウスやいびきの原因)」、また、舌は顔周辺の筋肉とつながっているため「顔の歪みやたるみ」が生じるなど、さまざまな体への悪影響を引き起こすリスクが高くなります。
現在は、昔に比べて柔らかい食べ物を食べることが多いため舌を鍛える機会が減り、年齢が若くても舌の筋力が衰えている患者さんが多いといわれています。
みなさんの診療所でも、このような患者さんに気付くことがあるのではないでしょうか?

低位舌とサルコペニアのイラスト

ベロポジションチェック

お口を閉じた状態で、舌がどの位置にあるかを簡単にチェックします。「1」が正しいポジションです。

  1. 舌が上あごにべったりとついている
  2. 舌先が上の歯の裏についている
  3. 舌先が下の歯の裏についている、あるいは舌がどこにも触れていない

 

「舌」の筋力低下は「サルコペニア」になるリスクが増える(岡山大学の発表より)

岡山大学の研究グループが、舌の筋力(舌圧)低下によって高齢者の栄養状態が悪くなり、その結果としてサルコペニアになるリスクが増えることを示す研究を発表しました。

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の稲田さくら大学院生、岡山大学学術研究院医歯薬学域予防歯科学分野の江國大輔教授らの研究グループは、2022年10月から2023年6月の間、岡山大学病院歯科外来を受診した60歳以上の患者を対象に、サルコペニア、口腔状態、栄養状態、精神・心理状態、併存疾患を調査(横断研究※)。
とくに「サルコペニア」と「口腔関係」の項目を詳細に調べ、データをもとに分析を行なったところ、年齢の影響を受けますが、舌の筋力が低下していると栄養状態が不良であり、サルコペニアの者が多いことがわかりました。
本研究の結果から、舌の筋力を鍛えることで、サルコペニアを予防・改善できる可能性が示唆されました。


[出典] 稲田さくら、「口腔状態とサルコペニアとの関連についての横断研究」、口腔衛生学会雑誌、第74巻、第1号、2024年
岡山大学 プレスリリース 舌の筋力がサルコペニアと関連していることが判明! 2024年02月22日
※横断調査:ある集団のある一時点での疾病(健康障害)の有無と要因の保有状況を同時に調査し、関連を明らかにする方法のこと(日本疫学会より)。


 

舌トレーニングの効果と方法

舌の運動機能は、トレーニングによって鍛えることが可能です。また、舌筋のストレッチで筋の拘縮を防ぎ、柔軟性を高めることもできます。
ここでは舌トレーニングの効果と方法について、ご紹介します。

舌トレーニングの効果

【口呼吸の改善】

舌の筋力が衰えると、舌が下顎の方へと下がって気道を圧迫するため鼻で呼吸がしにくくなり、口呼吸になってしまいます。口呼吸は、睡眠中のいびきやドライマウスを引き起こす原因にもなります。舌の筋肉を鍛えることで、口呼吸の改善につながります。

【唾液分泌を促して口内環境を整える】

舌トレーニングをすることで、口周りにある唾液腺を刺激します。唾液の分泌により口腔内が清潔に保たれ、むし歯や歯周病、口臭などの予防効果が期待できます。

【サルコペニアの予防・改善】

舌トレーニングで誤嚥を防ぎ、適切な栄養摂取が可能になることで、サルコペニアの予防や改善につながります。

【歯並び悪化の原因の改善】

安静時に舌がどこにあるべきか正しい位置を習う機会が少ないため、舌癖がある方も少なくありません。正しい舌の位置をトレーニングすることで、歯並びの悪化を防ぎます。

 

舌トレーニング

舌のトレーニング、ストレッチの一部を紹介します。

【あいうべ体操】

舌と口周辺の筋肉を鍛えるトレーニング法として広く知られた体操です。
「あ」「い」「う」と発声するときの口の形をとり、最後に「べー」と舌を突き出す。
顔や首がポカポカ温かくなるくらい、大胆に動かすことがポイントです。声を出しても出さなくても効果は変わりません(目安は毎日30回)。

あいうべ体操イラスト

【舌の体操】

舌の体操を行うことで、咀嚼時・嚥下時の舌の動きを保つことができます。

  • 舌を前・上・下・左右に、突出させる。
  • 舌を突出させて、右回り・左回りに動かす。
  • お口を閉じたまま、舌を上下・左右、右回り・左回りに動かす。

 

【ポッピング】

  • 舌全体を上あごにぴったりと吸い付けて、そのまま口を大きくあけて10秒ほどキープ。
  • 舌を一気にはがす。このときに「ポンッ」と大きな音を鳴らし、これを3~5回ほど繰り返す。

 

まとめ

今回は「舌の働き」や「舌トレーニングの効果や方法」についてご紹介しました。
筋肉のかたまりである舌の筋力低下は、お口だけでなく全身の健康にも影響を与えるため、舌トレーニングで筋力を維持することが大切です。
また、舌を動かし口周りの筋肉を鍛えることは、顔のたるみやむくみを防ぐ効果も期待できます。
今回は「舌トレーニング」の一部を紹介しましたが、ほかにもたくさんのトレーニング方法があります。
Dキャリアプラスでは「口腔機能発達不全症」や「MFT」についてのセミナーも行なっています。
ぜひ、参考にしてみてください。

口腔機能発達不全症への取り組みYouTubeサムネイル

  • Dキャリアプラス 「はじめよう!口腔機能発達不全症への取り組み~歯科衛生士の私たちがやるべきこと~」動画の視聴はこちら

 

Dキャリアプラス動画配信

Dキャリアプラスの公式YouTubeではセミナー動画やミニセミナー動画を視聴することができます。
小児・カウンセリング・自己啓発など、限定公開中の過去セミナーが視聴できる「チャンネル メンバーシップ」もぜひご利用ください。

DキャリYouTubeメンバーシップ告知バナー

  • Dキャリアプラス 公式YouTube「メンバーシップ」はこちら