コラム

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高血圧患者さんの歯科治療、注意したいポイントと対応について

高血圧患者さんの歯科治療

Dキャリアプラス編集部です。

今回は高血圧と歯科治療について、お話ししたいと思います。
春は寒さが和らぐため血圧も安定するようなイメージがありますが、春は1日の中で気温差が大きい日や寒い日もあり、血圧が上下しやすい時期です。

現在、日本人の高血圧患者数は約4,300万人と予想されていて、人口は約1億2409万人(2024年1月1日時点概算値)なので、およそ3人に1人は高血圧ということになります。
みなさんの診療所には、「高血圧」を持病とする患者さんはどのくらいいらっしゃいますか?
まずは「高血圧」をおさらいしていきましょう。

高血圧とは?

高血圧には本態性高血圧と二次性高血圧とがあります。
本態性高血圧は、食塩の過剰摂取や肥満、飲酒、運動不足、ストレスや遺伝的体質などが組み合わさって起こると考えられていて、日本人の大部分の高血圧はこのタイプです。
それに対し、二次性高血圧は甲状腺や副腎などの病気が原因で高血圧を引き起こすものをいいます。

高血圧は“いつも”血圧が高い疾患(≧140/90mmHg)です。
血圧が高い状態が続くと、その圧力によって動脈の内側の壁に存在する内皮細胞が傷害を受け、動脈硬化が進行します。
動脈が狭くなる、詰まる、破裂するなどを起こしやすくなり、脳や心臓、腎臓、大動脈といった臓器の機能が低下し、最悪の場合には命にかかわることがあります。

日本高血圧学会の高血圧診断基準は、診察室での収縮期血圧(最大血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(最小血圧)が90mmHg以上の場合を高血圧と診断します。
また自宅で測る家庭血圧の場合は、診療室よりも低い基準が用いられます。

[参考] 日本高血圧学会
[参考] e-ヘルスネット 生活習慣病予防 主な生活習慣病 高血圧

高血圧患者さんの歯科治療

問診票やお薬手帳、患者さんやご家族の方に既往歴や疾患の確認をすることはもちろん、「何の薬を服用しているのか」「薬の影響」などを把握しながら診ていきましょう。

確認しておきたいこと

  • 飲んでいる高血圧の薬の種類
  • その他に飲んでいる薬(とくに血液をサラサラにする薬)や治療中の病気などについて

 

高血圧の薬(降圧剤)

高血圧の方には血圧を下げる薬(降圧薬)が処方されます。
一般に血圧の下がりにくい患者さんほど、多くの種類が用いられるため、降圧薬の種類が多い場合は「血圧の下がりにくい患者さん」と推測することができます。

降圧剤は多くの種類があります。作用する仕組みは薬によって異なり、大きく分けると5つのタイプに分けることができます。

  1. 血管に直接作用して血圧を下げる
  2. 心臓に作用して送り出す血液量を減らし血圧を下げる
  3. 尿量を増やして体内の血液量を減らし血圧を下げる
  4. 自律神経に作用して体内コントロールによって血圧を下げる
  5. 血圧を上げる物質を抑え血圧を下げる

【降圧剤の種類は6種類】

  1. ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)
  2. ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)
  3. カルシウム拮抗薬
  4. 利尿剤
  5. α(アルファ)遮断薬 ※血管の収縮を抑える薬
  6. β(ベータ)遮断薬 ※心臓の働きを抑える薬

薬のイラスト

高血圧治療の第一選択薬のひとつとして用いられている「カルシウム拮抗薬」

動脈の血管壁にカルシウムイオンが多く流れ込むと血管が収縮してしまうため、高血圧を招きやすくなります。このような働きを抑え、血管を拡張させる作用を持つのが、カルシウム拮抗薬です。
この薬には、血管を拡張させる副作用として「歯ぐきの腫れ」などが起こることがあります。

カルシウム拮抗薬副作用表

気を付けたい、そのほかの薬

血液サラサラの薬

血栓症(脳梗塞・心筋梗塞・肺塞栓症など)の予防や発症後の再発予防のために、血を固まりにくくする薬(抗血栓薬)が用いられます。
これらの薬を服用している間は出血しやすい状態のため、注意が必要です。抗血栓薬には2種類あります。

◆抗凝固薬:血流の遅い静脈での血栓予防
代表疾患:深部静脈血栓症、肺塞栓、心房細動など
商品名:ワーファリン、プラザキサ、リクシアナ、イグザレルト、エリキュース、など

◆抗血小板薬:血流の速い動脈での血栓予防
代表疾患:心筋梗塞、脳梗塞、狭心症など
商品名:バイアスピリン、パナルジン、プラビックス、プレタール、エバデール、ペルサンチン、アンプラーグ、ドルナー、など

骨粗鬆症の薬(ビスホスホネート製剤など)

ビスホスホネート製剤は、破骨細胞に取り込まれ骨吸収を抑制し、骨密度を増加させる薬剤です。この薬を処方されている患者さんが歯性感染症(むし歯、歯周病などが原因で歯肉や顎骨などが腫れること)を持っていると「顎骨壊死」の可能性が高くなるため注意が必要です。そのほか抗RANKL抗体、抗スクレロスチン抗体なども顎骨壊死を引き起こす可能性があるとされています。

[参考] 日本歯科医師会「歯とお口のことなら何でもわかるテーマパーク8020」

治療前に注意すること

当日の状態や薬の服用を確認します。
血圧測定を行い、血圧が180/110mmHg以上の場合は、身体的や精神的な問題がないかを確認し、血圧再検時も高血圧が持続する場合には治療の延期なども検討が必要です。

歯科治療の際には「麻酔」と「抜歯」に注意が必要です。
また、歯科治療による緊張感も血圧に大きな影響を与えるため、リラックスしていただけるように声をかけるなど、配慮も大切です。
血圧が上がる男性のイラスト

まとめ

高血圧は3人に1人の時代です。初診時の確認はもちろん、体調の確認や治療前には薬の内容が変わっていないか、今日の分は服用したのかなどを確認するようにしましょう。
また、高血圧の患者さんに対するガイドラインに基づいたマニュアルを作成したり、勉強会を行うなど、安心して通院していただけるように準備をしておくことも大切です。
その他、歯科治療で注意が必要な病気や薬があります。高血圧と同様に対策をとっておくと安心です。

高血圧患者治療ガイドライン(日本高血圧学会)はコチラ