歯科衛生士の就業先6選 各職場のメリットとデメリット
こんにちは Dキャリアプラス運営事務局の岡元です。
今回は歯科衛生士の資格をいかせるお仕事と職場毎のメリット・デメリットについてご紹介します。
転職を考えた時、選択肢を増やすことができますので、最後までご覧ください。
前回の“城が行く!”でも介護施設で働く歯科衛生士さんと対談させていただきましたので、併せてご覧ください。
歯科衛生士の就業先
厚生労働省が2022年1月に発表した衛生行政報告書には、歯科衛生士の約9割が歯科医院(デンタルクリニック)で就業していることが記載されています。残りの1割の方はどんな就業先でお仕事されているのでしょうか。
(厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/20/dl/kekka2.pdf)
歯科医院の次に多いのが、一般歯科より難しい症例などを扱う総合病院(大学病院)で約5%。その他、高齢者への口腔ケアを主に行う介護施設、訪問歯科があり、保健所などの行政、医療機器や生活用品メーカー、人材紹介会社などがあります。
歯科医院
歯科衛生士の就業先で1番多いのが歯科医院。歯科衛生士の90%以上が、歯科医院でお仕事されています。業務内容は、歯石・歯垢の除去やクリーニングなどの予防処置、歯科医師が行う治療の補助など。その他、口腔ケア方法の指導なども行います。
歯科医院は全国に6万8,500件以上あるため、求人倍率が高く、ご自身に合った納得のいく職場を選びやすい傾向にあります。
メリット
・全国どこでも転職ができる
歯科業界は慢性的な人手不足が続いています。外来の経験がある歯科衛生士であれば、全国どこでも転職することができます。
また、歯科業界は超売り手市場ですので、ご自身に合った職場を選びやすいです。
・給与交渉ができる
歯科業界は超売り手市場のため、どこの歯科医院も歯科衛生士を欲しています。そのため、転職する際、給与交渉がしやすい場合が多いです。
デメリット
・土日の連休が取りにくい
一般的な歯科医院は平日1日と日曜日、祝日が休診日となっています。そのため、土日の2連休をとることが難しい場合があります。
・勤務時間
診療時間が終わった後に片付けや翌日の準備などをおこなっていることが多いです。急患が入った日には残業になることもあります。
病院
病院で働く歯科衛生士は全体の5%です。一般歯科より幅広い患者さんに対応しているため、治療が困難な症状や難しい手術を経験できます。また、病院内では歯科以外の病気を持つ患者さんへのケアも並行して行います。多くの病気や薬の知識が必要です。
難症例が経験でき、いろいろな知識を得られることもあり就職先としては人気です。
メリット
・難症例を経験できる
総合病院・大学病院には、一般的な歯科医院では治療することが難しい患者さんが来院されます。難しい症例を経験することができます。
・年収が高い
歯科医院で働く歯科衛生士の平均年収よりも、病院内で働く歯科衛生士の方が、約30万円年収が高くなります。(平均値)
・医科の知識が身に付く
総合病院には、歯の治療だけで来院されている患者さんだけではありません。他の疾患を持っている方もたくさん来院されます。そのため、仕事をする上で、歯科の知識だけではなく医科の知識が必要となりますので、医科の知識が身に付きます。
デメリット
・勤務時間
来院された患者さんが普段より多い場合や、急患が数名入る場合など、勤務時間が長くなりやすいです。
・土日の連休が取りにくい
歯科医院同様、土日の連休をとることが難しいです。
介護施設
口腔機能低下症は、誤嚥性肺炎や低栄養状態を起こすこと原因となっており、昨今では高齢者の口腔ケアが重要視されています。歯みがきや義歯(入れ歯)の洗浄、口腔内の細菌除去、口腔乾燥を防ぐためのだ液腺マッサージ、口腔体操などがメイン業務です。中には、歯科衛生士資格だけでなく、介護福祉士やケアマネージャーの資格を有している方もいらっしゃいます。
また、介護職員に対して口腔ケアの方法を指導することも業務のひとつです。
◇主な勤務先◇
介護老人保健施設
介護老人福祉施設
介護療養型医療施設
居宅介護支援事業所 など
メリット
・勤務時間
介護施設では「9:00~10:0歯面清掃」「10:00~11:00口腔体操」のように細かく時間が決められていることが多く、決まった時間に帰りやすい環境と言えます。
・転職がしやすい
歯科業界同様に、介護業界も慢性的な人手不足ですので、介護施設で働いた経験があるだけで転職の際に選択肢を多く持つことができます。
・やりがい
他の職場よりも「ありがとう」を言われる回数が圧倒的に多いことや、徐々に健康に近づいていく様をまじかで見られることなど、やりがいを感じやすい職業と言えます。
デメリット
・賃金が低い
介護施設で働く上で最大のデメリットと言ってもいいのが、賃金の問題です。この記事でご紹介する職場の中で一番平均月収・年収が低くなっています。
訪問歯科
訪問歯科は、歯科医院に通院することが困難な高齢者や障がい者の方を対象に、自宅などに出向く診療サービスです。業務内容は、歯科医師の補助や義歯の調整・洗浄、クリーニングや口腔ケアなど、外来での業務内容とほぼ同じです。他にも患者さんのご家族に自宅でのセルフケアの指導なども行います。現代日本は「超高齢社会」ということもあり、訪問歯科診療をはじめる歯科医院が多く、就職先として考える新卒の歯科衛生士も年々増えています。
訪問歯科では、主に一人で外出することが困難な患者さんに対応するため、お口だけでなく、身体の健康状態や介護を受ける人の生活状況などへの理解がとても大切です。
また、かかりつけの内科医や介護士、ケアマネージャーなど、医科、介護との連携も必要となります。
訪問歯科診療で歯科衛生士に求められていること
・全身の状態把握
・多職種連携
・口腔ケアの技術
・情報収集
・マネジメント
・生活の視点
Dキャリアプラスでは、訪問歯科の基礎的な知識を学ぶことができる認定セミナーを開催しています。
メリット
・転職がしやすい
現代日本は超高齢社会です。介護施設同様に、今後も需要はどんどん増加していきますので、歯科衛生士の需要は高まり続けます。
・視力低下の影響が出ない
外来においては、視力の低下により退職する方がいらっしゃいますが、訪問歯科では外来ほど細かいものを見る頻度が高くありません。そのため、視力の低下によって退職する方はほとんどいません。
デメリット
・勤務時間
歯科医院や病院は勤務時間が長くなりやすいとご紹介していますが、訪問歯科はそれ以上に勤務時間が長くなりやすいです。一日の訪問スケジュールを終えたあとに、事務所(事業所)に戻り、カルテをまとめたり事務処理を行うため、帰宅時間に影響が出やすいです。
・車の運転
訪問歯科診療は、訪問車で患者さんの元へ向かいます。歯科医師と歯科衛生士の2名体制だった場合、歯科衛生士が運転手をすることもあります。
保健所・公務員(市町村)
歯科衛生士全体の2.1%とかなり少数ですが、全国の市町村などの行政で働くことができます。業務内容は保健所や保健・福祉センターで、公務員としてお口の健康を推進することです。母子保健事業に関わることが多く、乳幼児の歯科健診をはじめ、母子対象の歯磨き教室など担当します。ただこの保健所など歯科衛生士の就職先としてはかなりの狭き門です。
そのため、初任給こそ歯科医院には及びませんが、生涯年収や福利厚生、保障面など加味すると歯科医院と比べ、得られるものが多いこともあります。
メリット
・勤務時間
保健所・福祉センターなどで働く方は正社員の場合、公務員となります。そのため、決まった時間で働くことができます。ここが医療機関などとの大きな差です。
・将来性
歯科医院や病院と比べると、初任給の額が低くなりやすいです。しかし、働いた年数で給与は上がっていきますし、福利厚生の面で歯科医院や病院よりも待遇が良い場合が多いです。長い目で見ると生涯年収などは、高くなる傾向にあります。
デメリット
・初任給の低さ
上記の裏返しで、初任給が低くなりやすいです。
・パート勤務不可
保健所・福祉センターではパート勤務などの固定で「週〇日」で働くことが難しいです。パートではなく、業務委託で歯科衛生士を採用している自治体がほとんどです。
企業・メーカー
歯科医療機器、歯科材、生活用品などを生産・販売している企業で働く方は歯科衛生士全体の0.2%ほどです。歯科医院や病院、小売店などへの営業、予防歯科の関連商品の開発やセミナー講師など、業務や役割は多岐にわたります。
患者さん相手のお仕事ではなく、歯科医院や学校、小売店が顧客になることが多いです。企業での就業を考えている方は、歯科衛生士としての知識に加えて、コミュニケーション能力が求められます。
メリット
・福利厚生
個人経営の歯科医院では、社会保険に加入することができない場合がありますが、企業に所属するほとんどの場合、社会保険に加入することができます。
デメリット
・患者さんと関りが持てない
歯科衛生士として、患者さんと関りが持てないことで、現場感がすこしずつ薄れてきます。歯科材を扱う企業などへ所属している場合は、医療機関と取引することも多く、現場感があるとそれだけで説得力が出ますので、それが薄れてきてしまうのはデメリットと言えます。
キャリア
今後、進みたいキャリアがはっきりと頭に描けている場合、将来を見据えて職場を選ぶことができます。高齢者の口腔ケアに携わりたいと考えている方は、訪問診療をおこなっている医院で働く、小児歯科でお仕事をしていきたい場合は小児専門医のいる歯科医院や病院で働くなど、自分の目標にあった職場で経験を積むことで成長できます。
また、専門的な知識・技術を身に付け、症例で発表した歯科衛生士を認定する「認定歯科衛生士制度」もありますので、自分が興味のある分野を勉強できる環境が整っている、資格取得へのサポート体制が整っているなどを基準に職場を選ぶのも良いです。
まとめ
今回は、歯科衛生士の就職先をご紹介しました。
皆さんはどんな職場を選びますか?
自分が将来やりたいことがはっきりしていると、今どんな職場を選ぶのが良いのかわかり就職・転職活動がスムーズになりやすいです。
保健所や保険・福祉センターなどの狭き門に挑戦する方は、提出書類はもちろんのこと、自己PRをしっかりと話せるようにして挑みましょう。
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