【第3回】オーラルフレイルの予防に口腔トレーニング
こんにちは。Dキャリアプラス代表、歯科衛生士の城 明妙(しろ あけみ)です。
第1回『お口と身体の健康にかかわる「オーラルフレイル」を知る』
第2回『オーラルフレイルを予防するためにできること』
と、今改めて「オーラルフレイルをおさらいする理由」や「歯科衛生士はオーラルフレイルの予防のために何ができるのか」をお話してきました。
加齢に伴う口腔機能の衰えや口腔機能への意識の低下などから起きる「オーラルフレイル」を予防するために、私たち歯科衛生士ができることはさまざまです。
最終回では、「オーラルフレイル」予防のための口腔トレーニングについてご紹介します。
口腔機能の維持向上に「トレーニング」を!
歯科衛生士が患者さんのオーラルフレイル予防のためにできることの一つが、セルフケアの重要性をお伝えすることです。
手軽にできるセルフケアとして「口腔トレーニング」をご紹介してみてはいかがでしょうか。
パタカラ体操
パタカラ体操は代表的な口腔トレーニングです。加齢により筋力が衰えると、口輪筋や舌の動きが悪くなります。
パタカラ体操を日常生活に取り入れるだけで、咀嚼や嚥下の機能を回復させる効果があります。
「パ」…食べこぼさないようにしっかりと捕食するためのトレーニング
破裂音である「パ」は、唇をしっかりと閉じて上下の唇を離す際に発音します。
そのため、唇を閉じる筋力を鍛えることができます。
「タ」…食べ物を咀嚼し、押しつぶす、飲み込むという動作のトレーニング
舌を上あごに押し付け、上あごから舌が離れる際に発音します。
食べ物を押しつぶしたり飲み込むときに必要な舌の筋力を鍛える効果があります。
「カ」…誤嚥せずに嚥下するためのトレーニング
のどの奥の方と下あごの筋力を使い、のどを閉めることで発音できます。
食べ物を飲み込んで、食道へと送るための働きをトレーニングします。
「ラ」…食べ物を口腔内に運ぶための舌のトレーニング
舌を丸め、舌先を上の前歯の裏に押し当てて発音します。
舌の動きは食べ物を口腔内まで運ぶなど、飲み込みを助けます。
何度か連続で発声していく中で、発音が不明瞭、前半と後半で速度が異なるということが起きると、それは筋力が低下していると考えられます。
患者さんにパタカラ体操を教える際には、「なぜ必要なのか」や注意すべきポイントも一緒にお伝えしましょう。
発声・吹き戻し
パタカラ体操のように、舌や口腔の筋肉をスムーズに動かすことは難しい、という患者さんもいらっしゃいます。
その場合には、「まずは声を出してみましょう」と難易度を下げた状態から始めることも必要です。
姿勢を正して「アー」と発声するだけでも、口を開くための筋肉や軟口蓋が動きます。
何秒間継続して発声できるか、どの程度口を開くことができるか測るなど、トレーニングを継続することで次第に口腔機能の向上につながります。
また、吹き戻しも効果的です。
吹き戻しとは、口にくわえて息を吹き込むと袋状の巻紙が伸び、吹くのをやめるとクルクルと戻ってくる笛のおもちゃで、呼吸機能や嚥下機能の維持向上に、安定した負荷でトレーニングできます。
株式会社ルピナスさんが「長息生活」という商品名で、口腔ケア用品として進化させた吹き戻しを販売しています。
株式会社ルピナスさんについては、以下の記事で詳しくご紹介しています。
株式会社ルピナス オーラルフレイル予防に注力 ~「吹き戻し」で医療と介護に貢献~
株式会社ルピナス オーラルフレイル予防に注力 ~「吹き戻し」で医療と介護に貢献~続
「100%歯磨き」から「口腔機能の維持向上」にギアチェンジを!
いかがでしたか?
全3回にかけて「オーラルフレイル」をご紹介してきました。
超高齢化社会という社会背景や、歯科医院のか強診(かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所)取得など、今後高齢者への診療は不可欠になっていくと考えられます。
歯科衛生士は患者さんからの「最近噛めないものが増えてきた」「むせるときがある」などの相談に耳を傾けて、口腔機能低下のサインに気が付くことが大切です。
今回ご紹介したうような口腔トレーニングを患者さんにお伝えするなど、歯科衛生士が主体となってオーラルフレイルの予防に取り組んでいきましょう。
歯科衛生士の意識を「100%歯磨き」から「口腔機能の維持向上」にギアチェンジしましょう!
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