【第1回】お口と身体の健康にかかわる「オーラルフレイル」を知る
こんにちは、Dキャリアプラス代表、歯科衛生士の城 明妙(しろ あけみ)です。
口腔ケアが身体の健康を左右するというのは、歯科衛生士であれば少なからず感じることもあるのではないでしょうか。
今回から3回にわたり、お口と身体の健康に関する、「オーラルフレイル」についてご紹介したいと思います。
オーラルフレイルが重要な理由
現在日本は、超高齢社会という高齢人口が非常に高い状態が続いています。
今後も高齢率は高くなるとの予測があり、医療や福祉などは特にこの問題への対応が求められています。
また、か強診(かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所)取得のために訪問歯科診療を導入する歯科医院が増加しています。
こういったことからも、今後高齢者への歯科指導や口腔ケアは欠かせないものになっていくと考えられます。
ここで改めて「オーラルフレイル」をおさらいし、日々の診療などに役立てましょう。
オーラルフレイルとは何か
「フレイル」とは「虚弱」のこと。
加齢にともなって、心身の活力が低下した状態をいいます。
「フレイル」に「オーラル=口」を合わせた言葉が「オーラルフレイル」で、健康な状態から要介護とされる状態の間に現れます。
日常生活の中で何気なく感じているお口の衰えに対して、適切な対応を行わないままにすると、お口の機能低下につながり、そして、身体全体の機能低下にもつながってしまいます。
フレイルから続く要介護状態にならず、健康で自立した生活を長く保つためには、少しでも早くオーラルフレイルに気づき、予防や改善に取り組むことが大切です。
オーラルフレイルの症状
お口にはさまざまな役割があり、これらがしっかりと機能することで心身共に健康であることにつながります。
- 「食べること」(噛む・すりつぶす・飲み込む・味わう)
- 「話すこと」(発音・会話・歌う)
- 「感情表現」(笑う・怒る)表情を作ること
- 「呼吸」
しかし、加齢などにより口腔機能が衰え、次のような症状が起きることがあります。
- 食事でよく食べこぼす
- 固いものが噛めなくなった
- 口が乾燥しやすい
- むせることが増えた
- 滑舌が悪くなった
このような「ささいなお口のトラブル」が、実はオーラルフレイルの症状ということもあります。
オーラルフレイルは段階を踏んで、進行します。
まずは、口腔に関する関心が低下。そして、むし歯や歯周病で歯が抜け、痛みが出てきます。
すると、「口腔機能」が衰えて、心身の機能低下(フレイル)へとつながっていくと考えられています。
ささいな症状だから、このままにしておこう、と放っておくと、口腔機能が低下することで、誤嚥性肺炎になるリスクが高くなります。
まとめ
日々の生活の中でお口の衰えを感じていないか、ご来院の患者さんや、訪問先の患者さんとコミュニケーションをとりましょう。
例えば、口腔ケアの方法を伝えることに加え「むせることが増えた」など、ささいなお口の変化を感じていないか聞くことも良いかもしれません。
歯科医院での会話など、何気ないことから患者さんの生活を支えることにつながります。
歯科衛生士の意識を「100%歯磨き」から「口腔機能の維持向上」にギアチェンジしましょう!
次回は、「オーラルフレイルの予防」についてご紹介します。
訪問口腔ケアや、摂食嚥下についてはDSアカデミーで基本から押さえて学ぶことができるカリキュラムを用意しています。