咀嚼は摂食嚥下過程でとっても大切! ~苦手意識を捨てましょう~
こんにちは。
Dキャリアプラス代表、歯科衛生士の城 明妙(しろ あけみ)です。
摂食嚥下の分野にも歯科衛生士の能力が生かされていますね。でも、こんな声をよく耳にします。
「摂食嚥下は認定を持っていないと対応できないのですか?」
「新たなお勉強をしなくては実施できないですよね?」
「難しそうなので、踏み込めないでいます。」
「摂食嚥下はSTさんの領域ですよね」
実は、歯科衛生士が口腔ケアなどで観察できていることが、全て摂食嚥下における大切な情報となっているのです。
特に、準備期の情報をたくさん集められ、問題を発見できるのが歯科衛生士です。
・歯は噛める状態?何本噛み合っている?
・入れ歯の調子は?
・お口の乾燥は?
・舌は汚れていない?
私は昨年『健康咀嚼運動指導士』の認定を取得しましたが、咀嚼って本当に奥が深いと思いました。
認定取得のために多くの咀嚼に関する講義を受けた時に気づきました。
『摂食嚥下に必要な多くの要素は、準備期にあるのでは?』
なぜなら、ある程度咀嚼できて食塊形成できていれば、飲み込みやすくなっているのです。
つくづく人間のからだはすごいと思います。
咀嚼、食塊形成によって、「ドロドロのペースト食」を作っているのです。
それができていれば、刻み食、ペースト食などにしなくてもよいですよね。
発達の過程を振り返ると、離乳食は、消化機能や咀嚼機能が獲得できていない時期だから、
調理の工夫をして、食べることを学習していくものですよね。
では、咀嚼、食塊形成に必要なことを改めて考えてみると、何でしょうか?
・歯が噛み合って機能できている(細かく砕いて、すりつぶすことができる)
・義歯が合っている(噛んで、すりつぶせる、噛んだ時などに痛みがない)
・唾液が適度に分泌される
・舌、口唇、頬、顎が噛むために協力し合って動く
・お口の感覚がしっかりあり、口の中の食べ物の性状や味がわかる。
準備期は、脳神経といろいろな情報をやり取りするため、とても脳を使い、血流が増えることが分かっています。
幼いころ、祖母に「よく噛んで食べると頭が良くなるから」と言われ、煮干しや乾燥こんぶを食べた記憶もあります。
私が今まで多くの摂食嚥下評価に携わって感じることは、咀嚼と食塊形成ができていない方ら多いことでした。
窒息の原因も多くはこの咀嚼、食塊形成の問題が大きいと思っています。
噛めなくなると無意識にあまり噛まずにそのまま飲み込んでしまいます。
高齢になると若いときの飲み込む力や吐き出せる力がないので、飲み込みの問題や窒息が起きやすくなるのでしょう。
こんな事例がありました。
ゆで卵を食べて窒息された事例です。
対応が早く、事なきを得ましたが、ゆで卵の白身が原因でした。
一番危ない形態ですよね、ちぎれてバラバラまとまらず、大きな塊でもつるんと滑っていくものですから。
この方は、入れ歯を使っており、かなり長期にわたって受診されていませんでした。
摂食嚥下評価としての嚥下内視鏡検査と訓練の対応を依頼されて伺ったのですが、
内視鏡検査前の評価を先に行わせていただくと、入れ歯の問題があることが分かったのです。
奥歯のかみ合わせ部分がすり減り、しっかりと飲み込むために安全な状態にすりつぶせないことが分かりました。
そして、歯科医師による噛み合わせの調整、入れ歯の適合の調整を行いました。
その後は、何の問題なく、よく噛めてすりつぶすことができるお口に変わっていきました。
これは、咀嚼、食塊形成の大切さを改めて認識できた事例です。
摂食嚥下は特別なもとのしてとらえず、歯科医療従事者が得意とする分野の問題を多職種に伝えることから始めてみてはいかがでしょう。
その入り口としての無料の研修やDSアカデミー認定の摂食嚥下コース、デイサービスで行う口腔機能向上加算の研修などもあります。
歯科衛生士としての視野を広げられるいいチャンスになると思いますよ。
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