歯科×栄養の知識で、患者さんの予防や健康づくりをサポート!
近年、歯科と管理栄養士の連携が注目されています。
二つの分野の専門家が患者さんに関わることで、歯だけでなく栄養や食事に対するケアが可能となり、その相乗効果で「患者さんのより健康的な生活の維持と向上」につなげることができます。
そこで本記事では、歯科において必要な「健康と栄養の知識」や「歯科の役割」について紹介したいと思います。
目次
お口の健康からはじめる生活習慣病予防
むし歯や歯周病は、さまざまな全身の病気に大きく影響しており、生活習慣病やメタボリックシンドロームとの関連もよく取り上げられています。
また歯周病は、日本人の40歳以上の約8割がこの病気にかかっているとされています。日々の生活習慣が、歯周病になる危険性を高めることから「歯周病は生活習慣病のひとつ」に数えられています。(*1)
さらに、歯周病菌が動脈硬化の原因となり得ることも報告され、歯周病と心筋梗塞、脳梗塞などとの関連も指摘されています。生活習慣病やストレスといった原因だけでなく、歯周病原因菌などの細菌感染が血管を詰まらせる原因となることがわかっているため、歯周病の予防や治療が重要となります。
ここでは「お口からはじめる生活習慣病予防」のために重要な二つのキーワードについて、お話したいと思います。
みなさんは「メタボリックドミノ」や「新型栄養失調(隠れ栄養失調)」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか?
メタボリックドミノ
慶應義塾大学の伊藤裕教授が2003年に世界で初めて提唱した「メタボリックドミノ」の考え方です。
メタボリックドミノの最上流には「生活習慣」があり、肥満が上流に存在します。それぞれの危険因子(高血圧や食後高血糖など)が時系列とともにドミノ倒しのように連鎖していくことを「メタボリックドミノ」と呼びます。
メタボリックシンドローム(*2)が進行すると、ドミノ倒しのように「高血圧」「糖質異常症」「食後高血糖」などが起こります。次いで「動脈硬化」「心疾患」「脳血管障害」、最終的には「心不全」や「脳卒中」「腎不全」などの重大な病気が引き起こされます。
そして、むし歯や歯周病はメタボリックドミノのスタート地点に位置するといわれています。
そのため、歯科では不適切な食生活にならないように、患者さんのお口の健康を守らなければならないのです。
(*2)メタボリックシンドローム:内臓肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさることにより、心臓病や脳卒中などになりやすい病態を指します。単に腹囲が大きいだけでは、メタボリックシンドロームにはあてはまりません。
新型栄養失調・隠れ栄養失調
日本での「栄養失調」は、戦争中や戦後に聞かれた言葉だと思いますが、ここ最近、“ 新型 ” 栄養失調といわれる低栄養状態の人が増えていることをご存じでしょうか?
【栄養失調】
食事の摂取不足や病気による吸収不足、加齢に伴う身体機能の低下によって起こり、体重減少や障害などの症状が現れます。
【新型栄養失調】
摂取カロリーは足りているものの体に必要な栄養素が不足している状態のことで、免疫力の低下、倦怠感、貧血、冷え性、イライラなどのさまざまな症状が挙げられます。
【新型栄養失調の原因】
主な原因は、食事制限を伴うダイエット、スナック菓子・ファストフードやコンビニ弁当などによる偏った食生活などです。
手軽な食べ物は、脂質やカロリーの多い物が多く、ビタミンやミネラル、食物繊維といった「栄養素」の不足が指摘されています。
摂取カロリーは足りているのに、たんぱく質などの特定の栄養素が不足していることから、「新型栄養失調」や「隠れ栄養失調」と呼ばれているのです。
■高齢者
消化機能の衰えなどにより食が細くなったり、ありあわせのものだけで食事を済ませてしまう、歯を失ったことでかたい物を避けるようになるなど、食事が偏りがちになります。
■女性・子ども
自己流の食事制限のダイエットやファストフードでの食事、同じものを食べる偏食などが原因で栄養不足に陥るケースがあります。
■壮年期の男性
コンビニ弁当やおにぎり、ラーメンやカレーなど、早く手軽にカロリーを取れる食事が多くなりがちです。
食事には歯の喪失・噛み合わせなど、お口の環境も大きく影響します。
患者さんの様子を見てヒアリングを行い、年齢にあったケアを続けることや、治療とともに「食事指導」「栄養アドバイス」などを実施し「お口からはじめる生活習慣病予防」に取り組むことが大切になります。
Dキャリアプラス「コラム」で食事指導と栄養指導について紹介しています。
歯科における栄養指導の役割とは?
食事の摂取に大きく関わるのが、口腔機能です。
その「歯や口腔」を日常的に扱うことから、栄養の専門家とは異なる視点で「栄養」をみることができると期待されているのが『歯科』です。
このような背景から、歯科医院では「管理栄養士」を雇用するケースや、外来や訪問で「栄養指導」を行うために、栄養に関する資格を取得する歯科医師や歯科衛生士が増えています。
歯科スタッフが栄養を学ぶことで、さらに患者さんの健康に貢献することができます。
歯科疾患と生活習慣病
口腔が全身の健康に及ぼす影響については、さまざまな研究がなされ科学的なエビデンスも集積されています。
歯の喪失と咀しゃく能力の低下、噛めなくなることによるやわらかい食事や偏食の傾向が、生活習慣病を引き起こす原因になるなど。口腔内の問題が、いつしか全身の健康へ大きな影響を与えることが明らかになっています。
Dキャリアプラス「コラム」で高齢者領域における栄養の知識について紹介しています。
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「お口の中の健康」から「全身の健康」へ
かつて歯科医院は「むし歯になったら行く所」でしたが、現在は「むし歯や歯周病を予防する所」へと変化しています。
また、高齢化が進む現代では咀しゃく機能をはじめとする「食べる機能」や「栄養状態」の改善が、予防に次いで大きな役割となっています。
食事をとるための「お口の健康」を保ち、そうすることで「全身の健康」を守り、健康寿命の延伸へ貢献します。
Dキャリアプラスでは特に高齢者の「口腔機能」を守るための学習に力を入れています。関連コラムや動画学習サービスを参考にしてください。
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まとめ
いかがでしたか?歯科にかかわりのある「栄養の知識」は、予防を中心とした歯科医療には欠かせないものになっています。
Dキャリプラスでは管理栄養士さんに学ぶ「歯科×栄養」のセミナーを定期的に開催しています。今後も開催予定ですので、セミナー情報をチェックしてくださいね。
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